「植物に導かれて」55人目の日本人

一時間ほど待っただろうか。

 

サングラスをかけたいかにも南イタリアのおっかさん風、

その家のシニョーラ(奥さん)が現れた。

 

 

背は150cmにも満たないが横幅はかなりアル・・・・

次男のドメニコ、三男のアントニオを生んだとは思えないような三枚目系のおばちゃんだ。

 

 

慣れた手つきでサングラスを取ると

あんただれ?

 

というような顔で私を見る。

ニコリともしない。

 

 

南イタリア人は、だれでも気さくで明るいと思っていた私の幻想はここで崩れ去る・・・

 

こわい!(しかしあのフィレンツェのおばさんとはまた違ったこわさだ。威厳のあるこわさ)

 

 

そうそう例の美男子兄弟、ドメニコもアントニオも南イタリアぁ~という雰囲気ではない。

落ち着いた大人の雰囲気だった。

 

 

南イタリアのノリで(もちろん陽気で楽天的という意味)お願いしようと思ったが

 

そうは問屋が卸さない。

 

 

ドメニコは、おっかさんに事情を説明するとふむふむと聞いてる風だが

二人共別室に行ってしまう。

 

 

え~~~~何なに~~~向うの部屋で相談するんだわん(涙)

私はなにがなんだかわからないままひたすら待つと・・・・戸が開き・・・・

 

 

先ほどとは打って変わってマンマは笑顔。

 

“いいわよ~。”じゃ手伝って、昼ご飯の用意しましょう~~と

 

明るい声でおっかさんが言う。

 

 

私はいきなりだったので????なにがなんだかわからないが

ドメニコがウインク。大丈夫だったというではないか!

 

 

え~~~~!ほんとに!!!???

 

やった~~~~!

但し、あくまでも客人としてということだ。

 

 

え????

私は耳を疑ったが?

 

 

え~~~金払えってことかい~????

 

 

早い話しそういうことであった。

 

 

話しはそこできり上がり、というより有無を言わせずというか、

 

こっちの言い分も何もない・・という感じだった。

 

 

すぐ昼飯の準備を手伝う事に。

もうすでに出来上がってる(残り物)をテーブルに並べて準備はすぐ終了、

気が付くとえらくお腹がすいていた。

 

 

すると家族や使用人やら集まってきて総勢6人ほどいたように思う。

みんなで台所での昼食が始まった。

 

 

とても素朴な物ばかりがテーブルに並んでいたが

よく覚えているのはミニトマトの炒め物だ。

 

 

器にミニトマトが皮付のまま炒めた~という風に盛り付けてある。

 

それがめちゃめちゃうまい。

これ、塩味だけだよな~~~どうやって炒めたんだろうと・・考えていると、

 

 

おっかさんは私にこれも食べてみなさいよと。

 

何だと思う?

一口食べると

 

 

ウサギのトマト煮よ。”と。おっかさん。

 

え~~~ウサギかぁ~生まれて初めてだわぁ~

と言いながらガツガツ食べる。

 

白くて鶏肉のような淡白な味。

 

トマトとよく煮込んであってとても美味!

 

 

ブォーノ(うまいなぁ~)と心底思いながら言うと、

シリアスな食事の始まりであったがみんな一斉に笑い出す!!!!!

 

 

“え~~~~なんでなんで笑うの~~~”と

きょとんとする私。

 

 

おっかさんは、

 

“あんたでここに来た日本人は55人目なのよ。”

 

“しかしうさぎを食べた日本人はあんたがはじめてよ”と。

 

 

え~~~~~~~うさぎを食べた初めての日本人というフレーズより

55人目の日本人!という言葉に驚く。

 

日本のTVのドキュメンタリーに出た事があったこのアグリトゥリズモ(農家民宿という意味)をめざし

 

何人もの日本人が宿泊客として来た、というのだ。

 

 

へ~~~びっくり。

 

 

そのおかげで私も今ここにいるんだけどね。

しかし、こんな地球の裏側のしかも果てに50名以上もの日本人がすでに来ていたとは。

 

すごいっちゃすごい日本人。

 

それにしてもウサギのトマト煮はたいそうおいしかった。

あんなにおいしいのは、なかったように思う。

 

 

料理も一期一会だと今になって思う。

 

 

次号に続く