「南へ!」 ボロ電車の車窓から…

いよいよ南へ旅発つ日がきた。

列車に乗って約6時間以上の長旅はイタリアに来てから初めての経験。

 

 

イタリアに料理修行できる前に、

観光で南イタリアを周遊したことがあり、

 

 

イタリアのかかと、プーリア州にあるアルベロベッロという小さな街に日本人が一人住んでいるの

 

を思い出したのだ。

 

 

アルベロベッロは世界遺産になっており、

 

その女性は大観光地のお土産屋のご主人と結婚してる人だった。

 

 

とにかくその人になにかヒントをもらおうと

手紙で私の意志を書いて伝えておいた。

 

 

そして一度来てくださいといわれていたのだ。

(いつものダメ元精神発揮!)

 

 

本当にずうずうしいと思うが、こちらも必死だった。

なにか足がかりをつけなければと。

 

 

フィレンツェから特急電車にのり、

 

東へ。そしてアドリア海に電車が突き当ったら海沿いをまっすぐ南へ、

 

まずプーリア州の州都バーリを目指す。

 

 

初めて見るアドリア海の海の青さは初めて見る色で、

 

 

エメラルドグリーンに白色絵具を混ぜたような色は

すばらしく美しかった。

 

 

しかしリュック一つ背負い、どうなるのか私の運命?

と美しさに見とれながらも不安は一杯、の状態だった。

 

 

やっとのことでプーリア州の州都バーリ駅に着き、

そこからアルベロベッロまでのローカル電車に乗り換えだ。

 

 

バーリという街も初めてだったが、

内陸のフィレンツェとは大違い。

 

海の側だけあり、潮風が気持ちよくいかにも南国!といったかんじだ。

 

 

肌で感じる空気がまるで違った。

 

そして更に電車を乗り継ぎ、

 

 

ローカル電車で目的地アルベロベッロだ!

 

ホームでその電車の時刻表を見るとなんと1時間に1本!

 

フィレンツェからバーリまで6時間以上はかかってただろうか、

かなり疲れたうえにそれからまた在来線に乗り換え、

 

地元会津の磐越西線並みだな~、とがっくり。

 

 

仕方なくなにもない待合室で時間を過ごす。

 

待つ間も、どうなるのか不安状態。

 

やっときた電車は2両編成の今まで見たこともないポンコツ電車だ。

(うそ~。だ、だいじょぶかいな!?と思ったが)

 

これに乗らなければ行けない。

しかもたいした距離でもないのに1時間40分もかかるというではないか。

 

噂通りの、さすが南だ。

 

不便は当たり前の南。

 

 

ガイドブックにも、

1)水が少ない(水道、風呂などなど)

2)交通機関の時刻はあってないようなもの

3)危険(治安が)

 

観光で来た時もツアコンがしつこく注意してた。

 

 

ローカル線も案の定、10分ほど送れて出発(始発駅なのに……)、

やっとアルベロベッロに出発だ。

 

 

がったんごっとんとボロ電車に揺られていくうち、

列車は海沿いから内陸部へと更に南に下っていく。

 

 

車窓からの風景を見ていてだんだんと変化していく外の風景に、

 

私は本当に息が詰まりそうになった。

 

今まで見たことのない風景。見たことはあったのかもしれないがとても新鮮な風景。

 

緑(草地)が少なくなる、その代わり木が段々増えてきて、そして

 

ところどころにブドウ畑。

 

 

日本と同じ棚様式のぶどう畑が果てしなく続く。

土の色はグレー、そして赤茶、ぼこぼこと岩だらけだ。

 

 

フィレンツェの郊外や田舎にも何度か行っているが

全然違う!

 

 

本当に同じ国かと思うぐらいに自然環境が違うのである。

 

その風景に見とれているうちに窓を開けるとそよそよと心地いい風が吹いている、

その気持ちいいことといったら!

 

これこそ私が求めていたものだ!と

ボロ電車の中で一人感激したのを今でもはっきり覚えている。

 

 

あのフィレンツェという大都市、石畳と意思の建物で覆われた街から

 

自然いっぱいの環境、これが私には似合うし心地がいい!

 

 

 

そして不思議なこととがおこった。

 

 

ずっと続く木々はオリーブで実がたわわになっているのが見える。

どうしてだか涙が止まらなくなった。

 

 

日本での事、飛行機に乗ってやっとこさローマについた日のこと、

それからのもろもろの事、色々思い出し私はフィレンツェにはもう帰らないと、

 

 

ここで必ず料理修行先を何が何でも見つけるのだ!

と何度も何度も心の中でつぶやいた。

 

 

 

次号に続く