アフリカの風と埃

シニョーラにどのように言ったか全く覚えていない。

 

それはこの農家民宿を出て

シチリア島に行くということを。

 

10月も終わりの頃だったと思う。

 

しかし

 

出発の日のことだけはよく覚えてる。

 

 

そしてついにその日はやってきた。

 

目が覚めるとすぐは理解できなかったが

 

数分もすると

 

ああ、今日は出発の日なんだ。

 

 

ここを発つ日だ!

 

 

シニョーラと共に寝た部屋の天井を見ながら一瞬ぼんやりとそのように思い、

 

すぐ、飛び起きた!

 

 

だって、今日は長旅!

 

早朝の電車に乗るんだもん。

 

 

電車で8時間以上もかかる目的地!

 

シチリア島に行くんですもん!

 

 

 

暗いうちからシニョーラは起きており、

 

寝室のすぐ横は台所、

 

甘~いにおいがしている。

 

 

シニョーラ

 

『約束してまだ教えていなかったドルチェ・クロッカンティーノをつくってるのよ』

と。

 

私とシニョーラと二人で

木槌で割って一個一個取り出した畑のアーモンドを砂糖ごろもでくるんだ

ヌガーのようなもの。

 

 

出来たクロッカンティーノをアルミホイルに全部包んでくれ、

 

チーズとパプリカの酢漬けをはさんだパニーノを持たせてくれた。

 

(食べたもののことだけはきちんと覚えてる(笑))

 

 

「気をつけていくのよ」と

 

 

まだ薄暗い駅まで車を運転して、

 

電車が来るまで付き添ってくれた。

 

駅ではさすがにほろりときたような気がする・・・

 

 

しかし

ほんと、おっかないおばちゃんだった。

 

 

同居の次男ドメニコとの大喧嘩は日常茶飯事。

 

何度遭遇したか。

 

 

 

温厚なドメニコを怒らすようなことを、

 

たぶん言っていたのがシニョーラだったのでは、

 

とワタクシ勝手に思っておりますが(イタリア語がわかない)

 

 

 

イタリア人の親子ゲンカってものすごい!

(他でも見ました)

 

たぶん、日本人にはない!

 

 

感情もろだしで、

 

激しすぎてワタクシ本当に驚きました。

 

耳をふさぎたくなる。

 

石の家だからまたそれが響いて。

おそろしオーラで充満。

 

百害あって一利なし。

 

この民宿の一番の印象は、その二人の大げんか。

 

 

そんなことを思い出しながらも、

 

しかしシニョーラと別れて電車が出発すると次モードへ!

 

 

 

初めての地・しかも島であるシチリアに行くんだ。

 

マフィアの巣とも言われているあの島に

 

一人ぽっちで

 

電車とバスを乗り継いて行かなければならない。

 

 

 

こわ~い。

 

そして

 

次の滞在地、シチリア・シャッカの農家民宿の人は、

 

私を本当に待っててくれているのであろうか?

 

 

 

なにもかも曖昧でまた不安で一杯だった。

 

 

 

電車はプーリア州のカステラーナという町から、

 

イタリア本島最南端レッチェまで行き、

 

そのまま電車ごと船に乗りシチリアの東の先端メルジェリーナへ渡り

 

 

そこからまた陸路・電車によって

 

目的地手前・シチリアの南海岸は遺跡の街アグリジェントまで。

 

 

船で電車~~?

 

って驚きましたが

 

 

あっという間に本島からシチリア島側に到着した。

 

 

また陸送がはじまると内陸をしばらく走り、

 

途中で海がまた見えてきたとき!

 

 

そこはまさに地中海のど真ん中!

 

海の向こうはアフリカだ~~

 

 

南海岸一の大都市・大観光地アグリジェントからは

 

今度はバスに乗り換え、

 

 

さらに西(アフリカ大陸側の海沿い)へ目的地のシャッカへ。

 

長い電車の一人旅は

 

車窓からの風景にくぎ付けだった。

 

 

その景色の移り変わり、本島とはまったく違う!

 

 

 

荒涼な風景とでもいうのだろうか。

 

見える山は岩肌が見え、木が全く生えていない。

 

さらに西のシャッカとはどんな街なのだろう、

 

 

車窓からはどんな街に着くかまったく見当もつかない。

 

 

 

やっと到着しバスから降りるとびっくり!

 

晩秋の気配の薄ら寒いプーリアとはまったくうって変わって

 

乾いた生暖かい空気と砂埃。

 

 

この砂埃は

 

後から聞いたらアフリカから渡ってくる風と埃というではないか。

 

 

 

まさに体中で浴びたそれは、アフリカからのものって感じだった。

 

目的地に下りて早速公衆電話を探し

 

 

例の農家民宿に電話すると

 

「5分で着くわよ~」と感じのいい

 

前のシニョーラより若めの女性の声がした。

 

 

その声を聞いて

私はどっぷり安堵したのを覚えている。

 

 

やっとあたりを見回す余裕もでて街の様子を見ると

 

まるでアラブの国か?と思うような街のつくりと雰囲気。

 

 

 

古い石造りの家々はかなりの年代のものと思われる建築様式。

 

古代にタイムスリップ?と思わせる雰囲気。

 

 

結構な街の賑わいの中、

 

ひっきりなしに私の周りを人が通り過ぎるが

 

人の顔も独特。

 

 

イタリア人?ってよりやはり

 

浅黒い肌と深い目のかんじがアラブ系。

 

 

 

ワタクシはその電話の声の女性を待つ中、

 

目をぱちくり。

 

いやいや~思えば遠くに来たもんだ~と思わず口ずさんでいた・・・・

 

 

 

次号に続く