その日は突然やってきた

その日は突然来た。

 

 

例のオトコから久しぶりに電話があり

 

 

 

オーガニックフェアがあるから

 

 

行かないかという。

 

 

 

 

 

 

ナポリの郊外にある見本市展示場の存在を

 

 

はじめて知る。

 

 

 

 

昔、中央区の晴海に、国際展示場があり

 

 

食品関連の見本市に行ったことがあった。

 

 

 

 

それのイタリア版か?

 

 

しかもオーガニック製品ばっかりの見本市という。

 

 

 

それは面白そうだね!

 

 

 

 

オトコの知り合いの知り合いが出展しているから

 

しかもオリーブ農家だというから

 

 

そこで話を聞いてみよう、

 

 

 

というのだ。

 

 

 

 

オトコがずっと気にしてくれていたことも嬉しいし、

 

気にしていただけじゃ、今回のような機会はないだろうから、

 

 

 

きっと

 

ずっと、わたしのいう条件に合う

 

オリーブオイルを折に触れて探してくれていたのだろう。

 

 

 

 

久々にそのオトコと例のマクロ食堂で待ち合わせし、

 

 

うすいみそ汁をすすりながら玄米定食を食べて

 

その展示場に向かった。

 

 

 

どんな見本市なんだろう!

 

オーガニック製品が一堂に会す、

 

 

 

わ~~~~~

 

考えただけでもワクワクする!!!

 

 

わたしは

 

それまでイタリア内の

 

 

 

北のリグリア州から、

 

南のシチリア島まで

 

 

例の本(オリーブ100選)と、人の紹介で

 

直接出向き探し回ったのだが、

 

 

 

どれも今一つで、

 

決定打に出会うことはなかった。

 

 

 

 

さて、展示場に着くと、

 

え、これですか?

 

 

ってな建物だった。

 

 

 

 

中央区晴海の国際展示場を想像していたのがバカだった。

 

 

 

その100分の一ぐらいの規模で、

 

 

は?ってな具合で、

 

 

 

 

中に入ると、天井の低い会議室のようなちょっと広めなフロアに、

 

 

各生産者がブースを作り(この辺りは晴海と同じようだった)

 

 

 

 

見物人がまあちょぼちょぼといる感じで、

 

どう見ても、規模が違う――――

 

 

 

しょぼい!

 

とがっくり。

 

 

 

 

しかし、数があればいいってもんでもないかと、

 

 

気を取り直して、

 

 

オトコと一緒に各ブースを回った。

 

 

 

 

例の知人はどこにいるのか?

 

その人に期待しようと、

 

 

 

たどり着くまでに

 

いろいろなイタリアのナポリ近郊から南側の生産者が

 

 

 

出展していた。

 

 

 

オリーブオイルの生産者がほとんどだ。

 

あの100選にはない生産者ばかりだった。

 

 

 

 

オーガニックに特化したフェアなので

 

聞かずともすべてがオーガニックもので、

 

 

 

その辺りは話が早かったが、

 

 

 

 

それまでに各地を回って右往左往していたので

 

 

出展者が搾油所オーナーか、

 

本当の生産物の農家さんか、

 

 

 

 

大体話を聞けばわかった。

 

右往左往したお陰がやっとあった。

 

 

 

そうこうしていると、

 

ちょっとにぎわったブースからは離れたところに

 

 

 

 

ブレザーとスラックスの紺のスーツ姿の女性が座っていた。

 

農家というより、どこかの会社秘書、っていう雰囲気の人だ。

 

 

 

 

オトコは、手を挙げると

 

 

 

その女性と握手し、

 

例の知人がこの女性かというのがわかった。

 

 

 

どうぞどうぞ、

 

紹介されたのが、ジョバンナさん。

 

 

 

握手をして、

 

 

 

まず初めに私が自己紹介をし、

 

そしてジョバンナさんが自己紹介、

 

 

ナポリ中心から60㎏ほど離れた内陸の古都べネヴェントから来ているという。

 

 

 

 

べネヴェントは大きな街なので名前は知っていたが

 

行ったことも、どんな街かも知らない。

 

 

 

 

旧市街があり、中心には凱旋門があり、

 

ローマ帝国時代から栄えた古都なんだそうだ。

 

 

 

その郊外のオリーブだけ栽培の農家だという。

 

 

へ~~~

 

 

じゃあ、オイルを味見してみようと、

 

 

 

ジョバンナさん、

 

黒色瓶からオイルをコップに注ぎ、

 

 

 

手でこすってコップを温めて

 

オイルの風味をたたせて香りをかぎ、味をみる。

 

 

 

オイルソムリエの学校に行って教わったのよ、

 

 

となかなかの勉強家。

 

 

 

そのオイルを口に含むと、

 

 

草の香りが鼻腔から通ってすごい!

 

 

 

その後ツーンとスパイシーさがのどを刺す。

 

スパイシーさもあるが、舌には甘くマイルドなあじわい

 

 

 

というのが印象。

 

 

 

悪くないな、と心の中で思いながら、

 

 

話を聞くと、

 

 

 

オーガニック認定を取得したばかりで

 

今まで搾油所に売ってもらっていたが

 

 

自分たち価値のわかる人に直接売っていきたいと言う。

 

オイルを自分たちで瓶詰めしラベルを貼ってねと。

 

 

夫婦で話し合い、初めてこの展示会に参加したそうだ。

 

 

 

 

え~~~なんか見込み濃そう!

 

その志いいな!と思いながら、

 

 

 

彼女、

 

是非、べネヴェントの畑にいらして~とにっこり。

 

 

 

 

オトコも、オイルをなめながら、

 

 

「サイコーだ」

「これ以上のものはないよレイコ」

 

「ボーンボーノ」と

 

 

連呼していた。

 

 

 

結構話が盛り上がり、

 

 

話だけだとほんものの一軒物のオリーブオイルだというのがわかった。

 

 

やっといた!

 

と思うとともに、

 

 

いやいや、まだ畑など、環境を見てみないとわからねー

 

 

 

 

と今までの経緯で何度も『違う』を経験しているので

 

ぬか喜びは禁物、と

 

 

興奮するのを自制しながら、自分に言い聞かせた。

 

 

 

 

オリーブオイルの出店者が7割ほどだったか、

 

ほとんどがオリーブオイルの販路確保のための会のような見本市だった。

 

 

 

味のいいオイルもあったが、

わたしはあくまで、シングルエステートにこだわりたく、

 

 

確実なのは今会ったジョバンナさんだけだ。

 

 

ジョバンナさんの旦那さんは展示場には不在で

 

彼女一人で出店していたのだが、

 

 

 

そつのない受け答えと、

秘書みたいな雰囲気に、少し意外性はあったものの

 

 

 

いいオイルなのだろうか、

 

わたしが扱うべきものなのか、

 

 

 

あーーーどうなるのだろうーーーーーー

 

しかし期待出来そうーーーーー

 

 

 

と逸る気持ちを抑えながらも

 

シングルエステートらしき初めての生産者との出会い。

 

 

しかし先行きはまだ不透明のままなのは変わらず

 

 

 

不安も入り混じりながらの期待に

 

 

何とも言えない気持ちで展示場を後にした。

 

 

 

 

次号に続く