「植物に導かれて」感動のスモモ

現れた青年は私を見つけるとサングラスをはずし笑顔で握手を求めてくる。

 

白い歯が印象的なハンサムボーイだ!

 

 

『ここにいたかイタリア美男子は!』と密かに思う私。

 

なにせ、イタリアに来てからいろいろなイタリア人に会ったが、

思い返すとイイ男系はさっぱりだったように思う。

 

 

ヨーロッパ人 = 背が高く、あっさり系の美男子

という勝手な想像をしていた私ですが、

 

 

フィレンツェ辺りにいるイタリア人は

背が低く、頭から足までやたら毛深く、

 

目力っての?これがぎらぎらで濃い濃い。

 

 

彼を見て、そんなことを瞬時に思う、

オンナのわたし。

 

 

背が高くすらっとした細面の彼は毛深くもなく(笑)

 

今まで見たことのない稀に見るいいイタリアオトコであった。

 

 

彼の名はアントニオ。

ちょっと名前が腑に落ちないが。。。。まぁそれは置いといて

 

 

それじゃ、民宿に案内するね、

 

とアントニオはフィアット・ウーノに乗り駅を出る。

 

 

この町の町並み、白壁の建物はアルベロベッロに共通しているが三角屋根はない。

こちらは観光地ではないので市井の人が生活をしている匂いが伝わってくる。

 

 

フィレンツェも大観光地だったので、

ちょっと今までと違う雰囲気。

 

 

イタリアに来て初めて、イタリア人が生活している街を実感。

 

生活者が、生きている!のが

 

伝わってきた。

 

 

街中を通り過ぎるとすぐ田舎の田園風景にかわる。

ブドウとオリーブ畑が果てしなく続く道を車は走る。

 

 

ブドウと並んでオリーブの大産地。

テレビで見た時もオリーブの街、として紹介されていたのを思い出した。

 

 

よく聞くと彼はその民宿の三人兄弟の末の弟だそうで、

大学で演劇を勉強してるとのこと。

 

 

 

そんな話しは適当に聞いて私は車の中で彼に直談判。

 

“実は私は料理の修業先を探しているがお宅の民宿で働かしてもらえないだろうか?”

 

アントニオは困る風でもなく、Mammaマンマ(おっかさん)に聞いてみるといいよ。

と白い歯を見せニコッとしている。

 

 

私は民宿に着くまでフィレンツェでの話しなどをしながらもう後には引けない、

 

どうにか民宿に住み込ませて欲しいと懇願した。

 

 

やっと着くと、立派なピンクの外壁の建物が見えてくる。

ちょっとしたヴィラ(邸宅)風だ。

 

 

アントニオは家に案内してくれ、

厨房に通されすぐ上の兄、ドメニコを紹介してくれた。

 

アントニオとは余り似ていないが、

 

ドメニコもとても感じのいい好青年だ。

 

 

まずいきなり来た事を詫び、

事情を説明、

 

さっきアントニオに話したとおりに説明すると、

 

彼もやはりマンマに聞いてみてからね、と

 

“はいよ、これでも食べてなよ”

 

 

ひょいっと黒く熟した小粒のスモモをを一個私にくれた。 

畑でとったばかりという。

 

へ~~自家栽培もんかぁ。それじゃ、いただきます!とかぶりつくと。

 

なんと~~

なんと~~~

ネットリと甘くスモモの味の濃いのなんの。

 

 

 

“こんなスモモ初めてだ!”

フィレンツェでも南から運ばれてくる果物のおいしさにいつも感動ものだったが

 

これはまたそれ以上に濃い!

 

 

今でも忘れられない感動のスモモの味だった。

 

 

こりゃ~~凄いところに来たぞ!という予感、胸の高鳴りが止まらない。

 

 

気付くと厨房内のガス代にはたくさんの鍋が料理中、くつくつ煮えている。

なんともいいにおいが漂っている。

これを作ったマンマ、この息子らのおっかさんとはどんな人なのだろう。

 

 

スモモの後味の余韻に浸りながら待つこと1時間ほど。

期待と不安が入り混じった気持ちとはまさにあの時のことだと思う。

 

 

マンマを待ちながら

この民宿で絶対料理修行をするんだ!

 

 

と自分にまた言い聞かせるのだった。

 

 

次号に続く