そのころの私は
携帯電話を持っていた。
携帯と言っても、
ハーモニカ位の厚さがあり、
その半分ぐらいの長さの
今からすると笑える携帯。
しかし、慣れない外国で携帯電話の存在はありがたかった。
その携帯電話が、今回ほど持っててよかったと、
実感したのはなかった。
そう、レストランのシェフ、ルイスからの電話を待っているからだ。
採用か不採用かの連絡だ。
採用するか、しないか、
そんなの一日もあれば決められるだろうに、
1~2日で連絡は来るかと思っていたが、
2日経っても、3日経っても来ない。
え~~~どいうこと?
そして一週間がたち、もう待ちきれない!
電話して、直接聞くことにした。
電話する時間帯が難しい。
前回初めて面談した時のあの時間なら間違いないだろう、
と、
夕方5時過ぎにレストランに電話し、
シェフと話がしたいのですがとお願いすると、
割と早くシェフが電話口に出た。
私「あの~先日そちらでお話した日本人のレイコですが」
「私、働けるんでしょうか、それとも働けないんでしょうか」
「お電話ないのでこちらから電話しちゃいました」
「お忙しいのにすみません」
電話口から
すんごい忙しそうな雰囲気が伝わってくる。
シェフ、多少不機嫌モードだ。
シェフ「あ~あれね、やっぱだめだわ」
私「え~~~~あら~~~なんで~~~」
「何で?どうして?理由は?」
私「そちらで働けなかったら私日本に帰れませ~~~ん」
シェフ「オーナーがやはり女性には無理だと」
私「そんな~~~~
私、かなり仕事が出来ます!!!」
「あなたが思っている以上に働きますよ」
「やってみて、使えないってわかったらいつでも辞めますから!」
シェフ「・・・・・・・・・・」
一瞬沈黙するシェフ、しかしこう続ける。
シェフ「きみ~~~ぃ給料要らないって言ってたよね」
私「はい。言いましたよ」
シェフ「本当にそれ、いいの?」
私「もちろのろんです、約束します」
シェフ「・・・・・・」
私「そこをなんとか、おねがいします~~~(懇願の声で)」
次号に続く