「植物に導かれて」幸運のはじまり

ひと通り出された料理に舌鼓を打ちながらも

 

先ほどの厨房でのシニョーラの料理を思い出してみる。

 

 

本当に信じられない事だが

 

あれだけの量のオリーブオイルを使って料理したにもかかわらず

 

なぜこんなにもあっさりと油臭さもなくスープにオイル分が浮くこともなく、

 

素材の味がそのまま

 

 

そして尚且つ、旨みが引き出ているんだろう。

 

素材がひとつにマッチし調和している。

 

 

テーブルには自家製だという赤ワインも並び、

 

それがものすごい強烈な味。

 

かなりアルコール度が高そうだ。

 

 

 

ちびりちびりやりながら、

例のイケメン三男坊・アントニオに色々と聞いてみた。

 

 

(私)  いつもこんなおいしいもの食べてるわけ?

 

(三男坊)ふふ、そんなにおいしい?とにやりと笑いながら答える

 

 

(私)  これかなりおいしいと思うよ。

     しかしレストランじゃあ出てこないようなシンプルな料理だね。

    あんたのおっかさんは随分とシンプルに味付けをしてたけど信じられないほどおいしい。

 

(三男坊)そうかい?それはきっとこの野菜が自家製のオーガニックだからじゃない?

     素材がいいんだよ。

 

(私)  え!!!!ほんとなのそれ?

 

日本で三行半を突きつけた私の元夫は有機農家。

 

 

私は4年半ほど農家の嫁をしており、

 

その前は自然食関連の仕事をしていた。

 

 

まあ、【ユウキサイバイ】にかけちゃあ、ちょっとその辺のシニョリーナ(お嬢ちゃん)とは年季

が違う。

 

 

私の中に【ユウキサイバイ】や【シゼンショク】というのは当たり前のことであった。

 

やっと見つけた料理修行先が有機農家の民宿とは!なんと私は幸運なのだろう!

 

これを知って私は俄然やる気が出てくる。

もう、胸がドッキンドッキンと脈打つのがわかるほどに興奮していた。

 

 

アルコール度の高いワインのせいもあったが、

 

あのシニョーラはちょっと癖がありそうだが、

 

ここでの料理修行はかなり期待できそうだ。

 

 

フィレンツェで自炊していたとき、

 

野外市場で買う野菜が全て南イタリアから来ていたことをきっかけに

 

素材がおいしい南イタリアで料理修行すべきだ!

 

 

という決心は間違っていなかった。
(私のカンに狂いはなかったぞ!)

 

やっぱり本場はひと味もふた味も違う。

そんな事を考えながら一人で料理をかみ締めながら長い夜はまだまだ続く。

 

 

ドルチェが出たあと、

 

自家製のリキュールが皆に振舞われもうお腹ははちきれそう。

酔いもいい具合に回って夕食が終了。

 

気が付くともう夜中の0時を回っている。

 

 

いつのまにかお客さんは部屋へと帰っていったようだ。

私もやっと腰を上げ部屋へ戻る前に厨房に入って驚く。

 

 

山のような皿で溢れていたからだ。

 

洗うのは修業の身の私の役目だ。

 

 

これが毎日続くのかと思うとがっかりすると共に

修行先探しに悪戦苦闘をした、

 

いままでのことを思えばこんな皿の山はなんて~ことはない!と

 

 

自分に言い聞かせながら“明日は明日の風がふく”

これイタリア語でなんていうんだろう?

 

 

なんて思いながら

 

イタリアに単身渡り、悶々とした3か月を経て

やっと修業先を見つけた私は

 

 

初めて安堵の中で床についた。

 

次号に続く