右往左往

わたしのこのころの住まいは

 

 

 

ナポリの旧市街からかなり離れた住宅街ヴォーメロだ。

 

一人暮らしの年の頃60代の未亡人の家に、

 

間借り住まいしていた。

 

 

 

 

顔ははっきり覚えているが名前が今となっては思い出せない。

 

んーーーーーアンジェラだったか。

 

 

 

いや、もっとねっとりした名前だったような、

 

(本人も女性ホルモンむんむんのねっとり系だったからか)

 

 

 

うる覚えだ。

 

 

 

 

妙に色気がある人で、

 

しかし私にはとってもやさしかった。

 

 

 

 

彼女はツアーコンダクターで、

 

 

近隣諸国からアメリカなどの遠方まで常に仕事で海外に出ていた。

 

 

 

 

性格も鷹揚で、うるさくもなく、

 

留守がちもあり、

 

 

 

お蔭でナポリの生活も結構、楽しんでいた。

 

 

 

いない時を見計らって、一度友達をたくさん呼んで

 

フェスタ(お祭りという意味もありますがこの場合は飲んだり食べたりおしゃべりしたりの会)

もしたっけ(^^;)

 

 

 

 

わたしはオリーブオイル屋になるんだ!と

 

決めて、

 

 

イタリアの、日本のオリーブオイル事情の

 

混沌さに憤慨し、

 

 

頭に電球がついて、

 

 

 

オリーブオイル屋になるという一筋の道は出来た。

 

 

 

 

しかし毎日そう思って頭が一杯、

 

 

というわけでもなかった。

 

 

 

しかしナポリライフを楽しんではいながらも

 

 

 

思い出しては

 

このままではいけない!と思いつつ、

 

 

しかしイタリアライフを楽しんでいた。(しつこい!)

 

 

 

海外で生活するって、

 

毎日学校に行く、や会社に行く、がなければ

 

 

 

 

誰にも何にもとがめられない!

 

自由を満喫できる身分!

 

 

 

しかしずるずるとしていると、

 

時間ばっかり経って、やばい!

 

は常々あった。

 

 

 

 

私はオリーブオイルを探さなきゃいけないんだ、

 

と、自分で自分を追い込まねばならなかった。

 

 

 

 

でなかったら、

 

イタリアライフ・ナポリライフが楽しすぎて、

 

それで終わるのは間違いない!

 

 

何度も書くがやばい、やばいのだ!

 

 

 

 

 

そして私は本屋で一冊の本を見つける。

 

 

その名も「オリーブオイル100選」

 

 

どういう基準で選ばれたのか、その時はよくわからなかったのだが、

 

 

100選に載っているオイルを品定めしながら、

 

 

 

 

よさげなオイルをその100選で探し、

 

 

そしてこれは!と思うところに思い切って出かけていった。

 

 

 

もちろん、

 

行く前に電話して打診してから行くのだ。

 

 

「私は日本にオリーブオイルを輸入したいと思っています」

「見学させてください!」

 

 

 

と伝え、

 

OKがでると、

 

 

そこに行くのは行くのであるが、

 

 

行くと

たいてい、100選に書いてあることと違う

 

 

 

今は笑えるが、

 

その時の落胆はそれはそれは大きい。

 

 

 

 

なにせ100選に載っているオリーブ農家は、

 

 

北のリグリア州からシチリアまで、

 

 

 

主要幹線鉄道からはほぼ間違いなく外れた、

 

バスも使って最寄りまで行かなければならない。

 

 

 

やっとのこと訪ねるのではあるが・・・・・

 

行って無駄足だったとわかることがほとんどだった。

 

 

 

ここぞ!と思われる

 

一軒物、混ぜ物のないと思われる証

 

「シングルエステート」が自慢と

 

 

 

書いてあるオイル屋さんに行くのではあるが、

 

 

 

 

畑を見学、そして搾油所も見せてくれ、

 

お昼は漏れなくおいしそうなランチが用意されており、

 

 

 

自家製オリーブオイルをたっぷり使った

 

イタリア家庭料理が振舞われた。

 

 

 

オイルはたしかにおいしかった。

 

 

どこのオイルもまあまあいい。

 

 

 

 

昼も食べながら、

 

私はもうここには縁がないと思いながら

 

 

ランチを食べることはつらかったが、

 

要領よく断るほどイタリア語が流暢ではなく、

 

 

 

結局、四苦八苦して会話を続け、

 

ランチをいただくのである。

 

 

さて、

 

なんで苦しいランチを食べなければならなかったって?

 

 

それはもう、

搾油所を見れば、そして話を聞けば

 

 

 

 

ここが本当のシングルエステートではないと

 

さすがに判る。

 

どこも、混合オイルなのだ!

 

 

わたしは、ほんものの、一軒物の、誰のオイルも混じっていない

 

あなただけのオイルが欲しいんだけど!

 

 

と心の中で叫ぶのではあるが、

 

 

全部違う。

 

 

 

結局のところ、

 

たいていは搾油所銘柄のオイルだった。

 

 

果実は近隣の農家さんが持ってくるオリーブ。

 

 

 

そして搾油所さんにはたくさんの農家さんのオイルが

集まる。そしてそれを自分のオイルですよ~

 

 

 

って売る。

 

これが殆どだった。

 

 

 

そしてまたわかったことなのだが、

 

 

 

初回の農家民宿のドメニコのオイルも、

 

シチリアの農家民宿のオイルも、

 

またナポリの民宿のオイルも、

 

 

 

自分のオイルを瓶に詰めて売っていなかった!

 

 

 

農園の大きさもそんなに広くなかったのだろうが、

 

あの方々は自家製オイルを自分で第三者に瓶詰めしたものを売っていない。

 

 

 

農家民宿が自分でブランドをつくりラベルを貼った

 

オリーブオイルを売るというのは

 

 

とても難しいことという。

 

 

それは民宿でなくてもそうだ。

 

 

自分で栽培したオリーブを搾油所でしぼってもらい

 

それを自力で瓶詰めし自力で売る、は

 

 

そんなに簡単なことではないということだ。

 

 

どうやって売るんですか?ってことだ。

 

 

 

食料品店さんを開くかまたはそういう店に卸すか、

 

 

 

しかしイタリアの家庭人は500㎖や750㎖や1リットル?

 

の瓶に入ったオイルを買う人もまれで、

 

 

 

みな一年分をまとめてタンクで購入する。

 

日本の米のような感覚だ。

 

 

 

そうなると

 

巷に売っている瓶詰のオリーブオイルって誰がつくったのか?

 

 

 

それは100選であっちこっち歩き回り

 

ようやくわかった。

 

 

 

 

元締めのようなポジションの搾油所が

 

売るのです。

 

ほとんどが、外国に向けて、オイルがたくさんとれない地域に向けて。

 

 

 

搾油所さんは一度流通の経路ができると

 

それを続けて販売していく。

 

 

そこに集まるオイルでは足りなくなると

 

豊富にある他県から仕入れる、または外国から仕入れる、

 

 

その現実を垣間見た。

 

 

 

そうなると、瓶の中身が、

 

 

誰のオリーブ果実のオイルのかが

 

まったくわからなくなる。

 

 

 

だめだこりゃ、が何回も続き、

 

わたしは本物のシングルエステートを探すべく、

 

 

 

イタリア内を右往左往するのである。

 

 

 

 

 

 

次号に続く