サルデーニャでの過ごした経験は
まさに真夏の夜の夢のような日々だった。
結婚式で味をしめ、社交ダンスを(オンナ)友達と通い、
意外に難しく体力を消耗するのについてくのがやっと。
硬すぎる自分の身体にうんざりしながらも、
しかし結構楽しくダンス教室に通い、
また語学学校に通いながら
ナポリでも仲良い友達もたくさんでき、
それなりに楽しい日々を過ごしていたある日。
やべ!
私、なんの為にイタリアにいるんだっけ。
このままではまずい!
帰国し偽物だらけの日本のオリーブ業界に
メスを入れる!
本当においしいオリーブオイルはこれ!って指し示したい、
にっぽん中の人に!
その為には!(何する?)
いや、まだ帰らないよ~
まだ始められない(輸入を)!
まだ何かが足りない。
そうだ、遊んではいられない。
まだ、何かが足りない!
そうだ!
私はまだ、
イタリア料理のプロの料理を見ていない!
レストランの料理は、
明らかに農家民宿の家庭料理とは違う!
プロの料理を私は見ていないことに気づいた。
やはり、
イタリアに来た時の初心・
レストランで働く、を視野に入れよう、
と、この時から思った。
私はこの時まで、
南部の農家民宿4軒
プーリア州、シチリア州、カンパ―ニア州、サルデーニャ州で
各地の郷土料理を見た。
それなりに各地にある特殊な食材や
そのおいしさも経験でき、
いろいろなイタリア南部の食事情も知ることが出来た。
ほんものの食材を見る機会と味わう機会は
自分自身を肥やすことが出来たと
この時点である程度の自信を持つこともできた。
日本に帰ってから、
どうやって、オリーブオイルを広げていくかは
全く白紙であったが
一つでも多くの「料理の技」を知らなければならない!!!
プロがどうやってオリーブオイルを駆使するか、知りたい!
と胸が高鳴る。
考えると興奮する!ブルブルブル~~~~武者ぶるい!
どこか働けるところはないか?
それから友達、知人、その辺に聞きまわったり頼んだりしたが、
イタリア到着したばかりの時と状況は全く変わらず
コックでない人間は雇えない、と断られるのが常だった。
あっちこっちのおいしいと言われるレストランに行き
(とはいっても)ナポリ周辺の料理屋ではあったが、
直談判してもダメ。
全然ダメ。
相手にしてもらえない。。。。。
途方に暮れていた。
そんなある日、
私は本屋で立ち読みをしていたところ、
一冊の料理雑誌を手にした。
パラパラとめくっていると、
縮れ毛のギリシャ彫刻のような彫りの深い顔のオトコと、
金髪ロングヘア―の女性が、
ばっと大きく雑誌一面に紹介されていた。
『自家菜園で採れた野菜とオリーブオイルで
ナポリ郷土料理をエレガントに提供する浜辺の小さなレストラン』
『南イタリアで初めてのミシュラン3ツ星に輝く!』
そう、でかでかと書いてある!
この夫婦のバックには、
オリーブの木がで~んと見える。
オリーブの枝の葉が太陽に照らされキラキラしている。
わたしはその写真を見て、
『わたしが働くはここだー-----!!!』
『ここしかない!』
と胸から湧き上がる興奮で、
その写真にくぎ付けになった。
今まであっち~こっち~を
さまよい歩いてお願いしていたレストランから、
とんでもなく高いハードルを
わたしは無謀なまでに
飛び越えようとしていた。
次号に続く