しょうがない
やるしかない!
シェフの命令、
ズッキーニの巻き巻き小前菜を!!!
と腹をくくる前に、
まずはやってみた。
一応しっかりシェフのやり方を見た。
シェフの教え方もうまいので、
ズッキーニをスライサーで何枚もスライスし、
シェフが作った残りのミンチを芯に、
ラップを使ってくるくると巻く。
一回でうまくいった!
そしてシェフに見せに行く。
「これでいいっすか?」
と目で合図、
シェフは皿に盛られたそれを
一瞬で見、
そして指で持ち上げ、切った断面を舐めるように見る。
それをぽいっと口に入れ、
もぐもぐ。
うんうんとうなずきながら
「OK!!!」
と言い残して去って行った。
ひゃ~~
これ、お客さんに出すんですか???
同じ前菜チームの
オーストリア国境の州ボルザーノ出身のマルコは
ニタニタと笑っている。
もう一人の前菜メンバー、
オーストラリア人のニックは、
えらいまじめで、
「レイコ頑張るんだよ」
よしよし、ってな風な顔で
慰め且つ激励してくれた。
二人とも、若い。
もちろん私より年下。
また、
マルコもニックも基本親切で、
道具の場所や、
外にある野菜を保存する保管室など
私は知らなければならないことを
丁寧に教えてくれる。
そして何より、
どちらもシンパーティコ(かんじがいい)
前菜チームに配属されてよかった~
と後から思ったのではあるが
そんなことを悠長に
思っている暇はなかった。
マルコがニタニタ笑いながら
私は必死で50名分の
例のズッキーニの巻き巻きをつくらねばならない。
大変な仕事だ!
そして夜の晩餐が開始!
シェフの合図で
最初のお客様の注文が入り
シェフがオーダー表をイタリア語で(もちろん)で
読む。
私は何が何だか聞き取れないが
最初の小前菜・ストゥツッキーニの巻き巻きを
必死でつくるのに精いっぱいだった。
次号に続く