折角見つかったレストランでの仕事も一週間でクビ!
が、
がっかりとしている場合じゃない。
もうイタリアに来て3か月近くがたとうとしていた。
予定は6か月の滞在だ、
もう半分も過ぎてるじゃないか。
働き場所が見つから、不安と焦りが入り混じった日を過ごす。
所持金は減るばかり……
毎日学校と下宿の往復だが、
自炊してるので買い物のため毎日メルカートに行くのは楽しみだった。
メルカートとは露天の青空市場のこと。
午前中一杯は、通りに八百屋を中心に食料品店が所狭しと並ぶのだ。
学校が終わるとすぐにメルカートに行くのが日課だった。
赤や黄色や緑、
といった原色の野菜やフルーツは
勉強で疲弊した心も生き返させてくれた。
そしてその新鮮な野菜がどれも安い安い。
トマト1kgで¥200とか。
オリーブオイルを適当に買ってイタリア料理風のものを作って食べていた。
買った野菜や果物はどれもおいしい。
シンプル料理でも野菜の味が濃く、
日本では味わえない味、
というのがすぐわかった。
私は野菜や果物を買うとき
野菜の入ってる木の箱(ダンボールに入ってることはない。全部木製)をみてどこからきたのか?、
もし書いてないときは八百屋のおじさんに聞いていた。
メルカートでは野菜の個別包装はまずない。
全部木箱に入れられている。
聞いてみると、
それらは大体が南部からきてるではないか!
おいしいトマトはカンパーニャ州やシシリー島から、
果物はプーリア州やシシリー島。
南部か~
野菜は南部がおいしいんだ!
南イタリアっておいしいものが一杯ありそうだなと
その時から南!ってどんなところなんだろう~と思うようになる。
一度、ツアーで南イタリア15日間周遊、ってので旅したことがあったが、
とても素朴な土地、時間の流れがゆったりしているのが印象的であった。
が、
食べ物がいけなかった。
ツアー、パック旅行の食事はどれもこれもおいしくなかったなぁ~
同じツアー参加メンバー中の、年配のおばさんは体調を崩す人もいた。
(たいていお腹を下してしまうケースがほとんどだったーこれは、
ずいぶん後から、あることが原因とわかる)
イタリアなのになんで食べ物がおいしくないの?
とその時絶対おかしいと、強く思った。
こうしてメルカートで買う野菜は南イタリア産、
こんなおいしい素材が作られる土地の料理がまずいわけ絶対無い!
とイタリアに住み野菜を食べて確信した。
南部にこそおいしいものがあるに違いない!
もしかして、私が今いるべき場所はここではなく、南イタリアなのでは?
そういう思いが沸々と湧き上がってくる。
どうにかして南イタリアに行くしかないな、と思ったら最後、
そればっかり考えるようになる。
どうやったら、どこに、行けばいいのか。
そしてついに南に行く決心をするのである。
フィレンツに住み始めて3か月が丁度すぎた頃のことである。
次号に続く