シチリア旅行を終え
例のフランコの農家民宿に戻り
またいつもの生活に戻った。
オットとの離婚手続きは春になるまで待とうと、
春まではそこで厄介になることを決めた。
私は
例のイタリアオトコのことを思い出していた。
シチリア旅行から帰る間際には
あのオトコ、クラウディオに連絡してみようと決めていた。
その辺りでは有数のリゾート地・ソレントでオリーブ栽培をしている
あのヒッチハイクで出会ったオトコだ。
出会いは軽いが、
変なイメージはなく、気のいい青年だったように見えた。
彼に連絡し、オリーブ畑を見せてもらおう。
思い切って電話すると、
「チャオ!
日本人のほら、ヒッチハイクしたワタシ、レイコで~~す」
「覚えてる??」
彼はもちろん覚えていると
とっても明るい声で返事をしてくれるではないか!
「ねえねえ、わたし、あなたのオリーブ畑みたいんだけど、行ってもいい?」
彼は
「もちろん~よろこんで!」
と明るく答えてくれ、
オトコの家に、オンナが気軽に行ってもいいのかって、
今考えるとちょっとな~と思うけど
その時は、オリーブ見たさとソレント海沿いのオリーブ畑は魅力的だった。
ソレント駅に迎えに来てくれたクラウディオは
例の白いチンクエチェントでミニチュアダックスフントと共にやってきた。
そして車に乗り、
シチリア旅行のことを語り(オットと行ったことは言わない)
シチリア料理の話題で盛り上がりながら、
彼が相当の食いしん坊だというのがよくわかった。
私たち、めっちゃ気が合うかも!なんて思ったような気がする。
ソレント半島の海沿いの道をゆっくりゆっくりチンクエチェントは走る。
絶景に見とれながら、しばらくして小道を入ると車は停まった。
車から降りるとダックスフントは一目散に駆けていき、
彼は門を開け入ると頭の上はレモン棚になっており、
通り抜けると海が前面に見える!
遠くにソレント半島の突端が見える!
すごいとこだーーーー
家がリゾート別荘のようではないか!
「わおわお~絶景だね!」と
私ははしゃぎながら彼の家に入ると、
古~~い石造りの家の中は暗く、
入るとすぐ台所で小さな小窓があるだけの薄暗いキッチン兼リビングに通された。
クラウディオは
エスプレッソマシーンですぐさまコーヒーを淹れてくれる。
何を話したかは全く覚えていないが、
正月を過ぎているのにオリーブ収穫がまだ全部終わっていない、
という話になり、
私は、びっくり仰天!
私の滞在する農家民宿は年内に終わっていたはず。
何で今頃まで~
え~~~
じゃ手伝うよと、外を見に行くと、
半島のがけっぷちにあるクラウディオのオリーブの木たちは
急すぎる傾斜面に木があり、
どうやってこれ採るの?と
人が通常モードでとれない条件の悪い畑だった。
そしてよく見ると、
木と木にはひもでつながれた網が張られており、
網が宙に浮いいている。
「ハテ?」「なにこれ?」
私が聞くと、クラウディオ、
「木に登れない、木の下にも行けないので網に落ちるのを待つんだ」と。
わたしは、オリーブ収穫についてはまだ良く知らなかったので
「へ~そういうもんなんだ」と
落ちるのを待ち、ある程度宙に浮いた網に果実が溜まったら
集めて搾油所に持っていくという。
「ふ~~ん」
網にはいくらかのオリーブが落ちており、
よく見るとなんだか実が熟しすぎて柔らかそうだ。
こうやってとる方法もあるんだ!
とその時思ったのをよく覚えている。
畑見学が終わると昼のランチの時間が。
クラウディオはさっきの薄暗いキッチンに入り、
昼の準備をしよう、と一緒に昼ごはんをつくり
二人で食べた。
イタリアオトコは料理も上手なんだ!
と彼のつくった料理がおいしかったのを覚えている。
ただ、何を作ってくれたかはまったく思い出せない。
オリーブオイルのことや、
彼の事、いろいろ話したな~
死んだおじいちゃんのオリーブ畑をほったらかしにしたくないので
僕が継いだんだ、というようなことを言っていた。
ランチの後は、収穫の手伝いをさせてもらう。
くま手のちっこいので枝をしごき鈴なりの果実を落とす。
結構力が必要で、一生懸命やった。
クラウディオは私に、
「きみ、この木を任せる、君全部やり給え」
と中低木の木を一本任された。
私はハッスルし木の上にも上り、先端についた鈴なりのオリーブも頑張って
しごき落とした。
何時間やっただろう。
もうへとへとに疲れ3時間ぐらいかけただろうか、
やっと一本の木のオリーブを取り終えた。
すごい重労働。
地面にはあらかじめ敷いておいた網にオリーブが全部落ちている。
それを25kg入るコンテナーに集めて入れると
「え~~たったこれだけ!」
コンテナーたった二分の一にも満たない量のオリーブしかない!
あんなに頑張ったのに!
たったこれだけ!
オリーブ収穫の大変さをこの時初めて実感したのであった。
次号に続く