ダイアモンドの原石

さていよいよ出発の時間が迫った。

話すことを話し終えた私たちはお互い、すっきりとしていたように思う。
母アントネッラは変わらず淡々と、あの笑みをたたえている。

途中でいなくなったバルバラも戻り、お互いこれから一緒にやっていく事を確認、
そして
家族に別れを告げ私はもう一度 畑へ。

森に囲まれたオリーブ畑をしっかり目に焼き付ける。

夏の草はどうなっているのか?

これも大いに見もの。
夏は是非また来なければ、とオリーブたちに別れを告げる。

母アントネッラの車で夕方遅いバスに乗り遅れぬよう
停留所まで送ってもらう。

彼女の姿をよく見るとティーシャツは所々穴があいている。
全く、容姿にこだわらない姿は着道楽のイタリア人にはなかなかいない〈笑)

車の中では何を話したか高速バスを気にするばかりでよく覚えていないが
最後に、自分自身のことを少し愚痴っぽく言ったかもしれない。

そして停留所に着いていよいよ別れるという時、

アントネッラは

‘きっと大丈夫よ‘

と私を励ました。

私は

‘だといいんだけど‘

とちょっと投げやりに言うと

彼女は

‘私たちのアクアサンタ(彼女らが住んでいる集落の名前)にきた人全ては
大丈夫なようになってるのよ‘

と、微笑みながらそう言った。

私は、その言葉を聞き‘ハットなる‘

‘そうか、大丈夫なんだ‘

と。

高速バスが到着、夕方の美しいウンブリアの街が車窓から見える。

しかし、いかにもウンブリアらしい丘が連なる雄大な風景。

バルバラやアントネッラの住むあのアクアサンタのような森はどこにも見えない。

なんだか、狐につままれたような感じにさえなった。
昨日今日の二日間は現実のものだったのか?と思うほどだ。

デジタルカメラの中には彼らの写真がしっかりある。

私は今回の旅、彼らとの出会いがこのようなものになるとは
想像している暇もなかったのだが
思いがけないいい出会いに感謝した。

あの気持ちのいい畑、バルバラが話した循環型農業、自然栽培のこと、
そしてアントネッラの思い、

それらを一つ一つ思い出しながら

彼らと共にいいオリーブオイルを作るんだ!

帰りのバスの中では興奮で転寝も出来なかった。

というわけで!

この一年はアサクラ農園と共にバルバラ・アントネッラのオリーブ畑を同時進行で
見ていく事になりそうです。

バルバラのオリーブはアサクラオイルと同じように1からの出発です。
アサクラオイル・農園のこれまでの経験をフルに生かし

畑の環境と自然のエネルギーを最大限に生かした
いいオリーブオイルを作ります!

いやいや~また今年も忙しくなるぞぉ~~~