新たな出会い  ―イタリアウンブリアにて―

バルバラがまず案内してくれたのがこれ

泥団子

倉庫の戸を開けるとこれ。
なんだかわかります?

私はてっきりジャガイモかと思いました(笑)

しかし違うんですね~
これが噂の泥団子です。

自然農法を実践していた福岡正信さんが考案した砂漠化している土地を緑地化するために

砂漠にそのまま種をまいたんじゃ芽が出ないので
泥の中に数種の種を混ぜて水を入れて固めた団子を作り

それを砂漠化したところや土地を耕さずにそのまま
その団子を放り込んでおくことで芽を出させる、という方法。

彼女はそれを実践していた。

緑地化のため以外にも、せっかくまいた種を虫や鳥、動物に食べられないため、
泥にまみれさせ少量の雨によってぬれた泥から種に水分が浸透し発芽するのだ。

よくこんなこと考えたな~と思っていたが
こうして実際の泥団子を見たのは初めて。

団子の作り方を説明してくれた。

昨年、会う約束をしていたが私がイタリア収穫の時期に彼女はこの団子のセミナーに
スペインに行っていたのと丁度重なり訪問がかなわなかった、

今回は私が到着した前日に自宅で団子のセミナーを自分が指導する立場となって
開催したそうだ。30名以上の人がこのアクアサンタに集ったそうで、

だれがそのセミナーに来たの?と私が訪ねると

ほとんどがウンブリア外のイタリア人で
シシリーやサルデーニャなどの離島から、
または南イタリアや北イタリアの遠方の人がほとんどだったそうだ。

バルバラは目を輝かせていう。
毎回ウンブリア外の人たちばっかりで
興味のある人は遠方の人がほとんどだが今回は一人だけ
ウンブリア州の若い野菜農家が参加したそうで

それがとってもうれしかった!と彼女は顔をほころばせる。

私は、なんだか日本の現状と同じだな~と。
私も千葉で有機農家の嫁をしていたころ
割と早くにEM農法などに手を出していたので
その筋の先生方がたくさんいらしてうちを実験農場として多数のセミナーを開催した、

その時も来るのは遠方の人。

地元の人なんてめったにいない。

地元、周りの人は私たちを‘変わりモン‘と思っていたに違いない。
そんな現状はどの国も同じなのだ。

人と違うことをする=変人

という方程式が成り立っているようである。

バルバラたちの状況もまったく同じとのこと。
しかし興味のある人はイタリア中にこんなにいるのよ~と。

泥団子実験〈色々な種の発芽)

わかりにくい画像だが、これは泥団子をおいて
発芽している畝。
ルッコラ、ソラマメ、レタス(だったか)多数の種を一緒に泥団子にした。
団子を置くときは雨が降る直前にやるのが最適だそうだ。

泥団子〈土)
これは麦のみの団子。

立派に発芽している。

パーマカルチャ〈土)

これは土の山に手を突っ込んでる。

土を掘り硬い粘土質の部分を掘り起こし山にする。
それを新聞紙で覆いさらに藁をかぶせてしばらくおいていたものだそうだ。

そうするとふかふかの土に変化する。
手に取った土のにおいをかいでみると土のいい香りに。

‘出来上がってるわ‘とうなずくバルバラ。

サフラン実験

きれいな畝(高く盛り上がった畑用の土地)に得体の知れない長い葉っぱがある。

これは何?と聞くと

このあたりの特産のサフランだそうだ。

これも彼女は無肥料で作っており、実際収穫をしているそうだ。

そのほか、家から出る汚水・トイレからでるものも含めて
浄化するシステムを作っていたりと・・・・

いろいろなことを実験している。
勉強家であり実践家でもあり、
真に環境に配慮した生活を実践しているのだなと
これらを見て思う。

イタリアでは有機栽培をする生産者がとても増えており
EUの中でもその耕地面積はうなぎのぼりだ。

しかし真に環境を考えている生産者は極々少ないように思う。

トラディッショナル農法(いわゆる化学肥料や農薬を使った慣行農法)だと市場に左右されるので
経営的に大変なので付加価値をつけ有機にし経営的に安定するように・・・・という考えで
有機栽培に入っていく生産者がほとんどだ。

これが決して悪いとはいわないが
私はこれだけでいいのか?と常々思っている。

本当に環境によい栽培って?
それってなんなんだろうと。

安心安全な野菜が食べられることは幸せだが
それだけじゃない。

これだけ環境が悪化している中、自然の復元はもう無理といわれているが
できるだけ環境に配慮した栽培ができないだろうか。

これは自然栽培がもっとも適していると思う。
簡単ではないがしかし、やり始めている人がこうしている。

彼女は言う。

‘私は自然を愛しているの、大地を愛しているの‘と!

愛はイタリア語で‘AMORE` アモーレという。

私が料理教室で使う、キーワードではないか!

愛なくしてうまい料理は作れない!ってね。

彼女がそういいながら前へ前へと進み農場を案内してくれる後ろで

私は

彼女こそ探していた本当の同士だ!と嬉しくなった。