ダイアモンドの原石

お待たせしました、
■新たな出会い~イタリアウンブリアは‘ダイヤモンドの原石‘とタイトルを変え続編です。

バルハラの自然栽培実地農場は泥団子から派生した野菜・麦・サフランに至るもので
訪れた3月の春の始まりにはその結果を見る事ができた。

そしていよいよオリーブ畑!

うっそうとした畑

オリーブの畑は合計1.5ヘクタール(だったと思う)
その中に樹齢60-70年クラスの木が400本植わってるそうだ。

アサクラ農園以上に勾配の厳しい畑、
上の写真を見ると樹齢だけがやはり違うのがわかるが

うちの畑にぱっと見、似ている。

しかしアサクラ農園は5ヘクタールに250本なので
その贅沢さにかけてはやはり他にはない恵まれた贅沢なものだというのがわかる。

自然栽培をする上での密集はオリーブバエの発生からみて
避けたいコンディッション。

密集した畑をみて、どうかな~と心配になる。

密集度は普通見られるオリーブ畑のようであるが
オリーブハエはココまでくるのか?と一番気になる質問をする。

木-3

木をよく見てほしい。
うっそうとしている。

これをみると剪定を十分に出来ていないのがわかる。

なんだよ~~こりゃ!ほったらかし農法か?と。
木の高さもかなりある。

収穫の時の大変さが想像される。

これはいわゆるバルバラたちがいう‘自然栽培‘の一つの方法なのか?(わざと?)と
聞くと
彼女は笑いながら、いやいや、とゼスチャーで否定する。

ただ単に手が行き届かないのだそうだ。

木

充分に手入れは出来ていない畑ではあるが
木をよくみると、すっと木の中心になる枝が立っていて
その脇に枝が又伸びている。

この木を見て、
オリーブというのはこういう風に伸びるのか!ということがわかる。

この木を見ると、森に生えているブナや樫の木、自然に生えてるどこにでもある木のようだ。

オリーブは果樹なのでその小さい実を収穫するにあたり
収穫する人間のために都合がいいような枝ぶりに剪定するのが普通だ。

+風通し、日当たり、を考える。

そうなると中心の枝を落とす事が多い。
アサクラ農園のオリーブ畑の木もそのような剪定になっている。

しかしバルバラの畑、充分に剪定が出来ず半分ほったらかしにしているのだが
これを見て本来の(自然の)オリーブの木の枝がどのように伸びたいのかがわかる。

未剪定の木

木の中を見るとこんな風。
わき目の枝ががんがん伸びている。

上に上に。

ちょっとかわいそうなくらいだ。
これは切ってあげないとな~と。ワタクシ一人ぶつぶつ、

とても気持ちいい、バルバラのオリーブ畑なのであるが
木たちが、わあわあと私に向かって言っているかのような感覚に襲われる。

悲鳴ではなのであるが、どうにかして~~と言ってるようだ!

このままではいけないという、プレッシャーがビシビシかんじられるのだ。

バルバラが言うにはどこを切っていいかわからず、
かといってプロの剪定師は効率・人間のご都合のいい風にしか切らないので
頼みたくないと。

この剪定をどうしたもんかが課題だと言う。

ふむふむ~と私。

そこで私はりんごの木村さんがどのように木を切る(剪定する)かの
基本を教えてあげる。

‘その木の葉っぱの葉脈の通りに切る‘というのが答えなのだが、

そう私がいうと、目をきらきらさせて

‘まぁ~なんてシンプルなの!そうかぁ~‘と。

しかし、
‘レイコ、葉脈って中央線は見えるけどその脇の脈が見えないわ‘

そうなのだ。オリーブの裏をかざしても脇に伸びている葉脈が見えない。
どのように剪定すればよいかの要になるものが見えないのだ。

しかし、私はこのほったらかしのバルバラのオリーブの木を見て、

どのようにオリーブが伸びたいか、伸びていくかがわかった。

しかしこのままでもいけない。

木村氏が、‘切っていくとわかるようになる‘と言っていたのが印象的だが

このバルバラの木を見ながら
出来そうな気になってきた。

来年はいっしょに剪定をしてみようとバルバラに約束する。

背景-森

一番頂上から彼女の畑をみた写真だが
向こうのほうに森が見えるのがわかるだろうか。

これはこの辺では珍しい樫の木の森だ。

話は戻るが、オリーブバエはココにもくるのだが、
樫の木があるお蔭で
そこに集まる昆虫、そして鳥達のおかげで食物連鎖が成り立っているそうだ。

オリーブバエは樫の木にあつまる昆虫達が退治(食べ)し、それを鳥たちが食べる。
ハエは発生するが、展開しない。それ以上異常発生しないそうで
オリーブは健康に保たれるそうだ。

オリーブバエはほぼイタリアの全土で問題になる。
北南に関わらず海の側はほぼ100%発生。

大抵は農薬で絶滅させるが
オーガニック農園はそうは行かない。

薬をまくことが出来ないのでそのままにする。

そうするとハエはオリーブの果実の中に卵を産み、
収穫時期になると果実の中で卵が孵ってウジが発生。

オーガニックモノはそのまま搾油し、ウジ入り、卵入りオリーブが出来上がるのだ。

農薬よりはましだ、という人もいるが
やはり、クオリティーの高いものはできない。

そういう意味でも

自然の恵まれた環境の中にあるバルバラの畑はなかなかありそうでない。

葉の裏

そういう意味でも剪定は不十分だが
この畑全部が宝物だ。

上の写真は葉を裏返しにして健康状態を見る。
病気にも虫にもやられていない健康そのもの。

昨年、見に行ったシチリアの自然栽培といわれている農家のオリーブ畑の木は病気だらけだった。
自然栽培というのに。

よくも見なかったのだが、

なにが自然栽培だったんだろうな~と。
ただ無農薬無肥料だからと‘自然栽培‘って言ってるだけだったのか・・・

この自然栽培、というくくりもどんどん増えていくだろうが
いかがわしいものもたくさん出てくるんだろうな、と思ってしまった。

世の中はレッテルのみで判断される傾向だが、

レッテルやプレミアムではなく、

誰がどんな風に育ててどのように作られたものか?

という事がきちんと明らかに出来るようでなければ全くの無意味なものになってしまう。

たくさんのケースを見たわけではないが、
これは帰国したからその筋の方たちと話して思ったのだが、
この自然栽培もこれからどんどん普及していくはずだ。

が、
なんでもかんでも、という風潮になったら無意味になってしまう。
きちっとしたガイドラインも必要になっていくだろう。

バルバラと話し、畑を実際に見て
彼女がどういう観点で自然栽培をしているかがわかってくる。

それは環境保全型農業が一番のコンセプトだというのが。

私はこのような生産者をイタリアで実際に行っているケース・人は初めてだと、
そして素晴らしい事を実践しているね、と彼女の今までをねぎらった。
その上で、今後が重要だとも。

自然栽培の畑が自分達の自己満足ではなく
出来た生産物を必要な人たちの手に供給できるよう、
最低限の世話をしその人たちに供給できるようにしようよ!と。

次の段階にきたんだよ、

と私は彼女の手を強く握り締めた。