ウンブリア州は海なし州
イタリア本土のほぼ中央に位置する
州の周りを
マルケ州(あまり特徴のない州だが、オーガニックCOOPのビオアグリチェルトの本拠地で有名)
アブルッツォ州(アサクラ農園のある州)
トスカーナ州〈フィレンツェで有名)
ラッツィオ州(首都ローマがある)
の4つの州に囲まれており
彼女らが住んでいる‘アクアサンタ‘はイタリアでも‘へそ‘部分と言われているように
本土の中央部に位置する。
海に面していないので回りは全て山、というか丘。
雄大な丘が連なるちょっと北海道のようなかんじだろうか。
丘にはオリーブ畑、牧草地帯、と山と言うより裸の丘に
畑か牧草地があるので日本の木の一杯茂った山というのではない。
そんな風景を予想していたが
アントネッラが運転する車がそのような丘を走っていたかと思うと
どんどん坂道を登っていき
しまいには道の両端は高い木が生い茂った林~森の中へと進む。
こんなところがウンブリアにあったのかと思うような風景。
まるで地元会津の山の中のよう。
というのもイタリアには広葉樹の森は本当に少なく〈中部以南に関して)
その山の中はQuercia〈クエルチャ-仙台弁ではない。樫の木のこと)が多く
これはかなり高い標高まで来たなというかんじ。
聞くと400mだそうだ。
400mというとかなりある。
道がどんどん細くなり
どん詰まりが目的地だ。
アクアサンタにやっと到着。
石の古い家がどっしりと建っていた。
家に入るとすぐ台所、いい匂いがしている。
日も暮れて彼女の二番目の娘のイザベッラが夕飯の支度をしていた。
彼女の3歳に娘も一緒にいる。
昼にパニーノ一個だけだったので相当腹がすいているワタクシ。
夕飯はなんだろう~~~と楽しみ!
私は生産者のところにいく時は必ずごはんを食べなければならないシュチュエーションを考えて
アポをとる。
今回はこの日の夕食、翌日の昼までしっかりご馳走になる計算。
とただずうずうしいだけでなく
そこで出てくる料理を味わえば大体生産しているもののが
どんなものか見当がつく。
もちろんオリーブオイルもたっぷり味見が出来るからだ。
そうこうしていると一人の男性が家に入ってくる。
だれだこの男は?息子か?(いやそれにしては老けている)
ロベルトというそうだ。
何者かはちょっと聞き取れなかった、最後まで聞きそびれてしまった。
謎の男としよう。
そんなこんなで一人二人と家の中に人が集まってくる
イザベッラが外にある鐘を鳴らす。
夕飯の支度が出来たっていうことらしい。
まだ誰かいるのかこの家には?
そして最後に男の子が入ってくる。
息子のダビデだ。
全員で6人+出かけてるバルバラの7人家族らしい。
アントネッラは‘さあ私たちのオリーブの味を見て頂戴‘と
ストーブでパンを焼き始める。
部屋が最小限の明かりでよくオイルの色が見えないのが残念。
かけて食べるが口に含んでよく味わうと
‘え?‘と。
‘なに?‘
もう一度、焼いてないパンにたっぷりかける
ちょっと気が抜けたようなかんじ? ‘え~~?‘
‘これは2008年産?‘と私。
‘もちろんよ‘とアントネッラ、‘おいしいでしょう~‘と。
確かに気が抜けたような味だ。
ちょっとがっかり~~~
しかし気を取り直してさあ夕食!
テーブルを見ると大鍋がど~~んとおいてあり
見ると中はスープパスタだ。
私にもちろん一番最初によそってくれる。
中にはレンズマメのスープにリガトーニが浮いている。
なんだかチープそうなパスタだけど、大丈夫かいな?と。
いやいや、食べてみなけりゃわかんないぞ。
どんな味だろう!と
食べてみるとやっぱり
レンズマメを大量の水を入れて煮ただけ。
そこにリガトーニを投入し塩をホンノ少々入れただけ。
食べながら‘マジ~~‘と。
失礼だが、あまりに清貧なメニューなのだ。
家の中を良く見るとイタリア人の家にしては物凄く質素で
調度品もなんだか中古品をかき集めた感じだ。
イタリア人は家=イノチ
ってかんじで家にお金を注ぐ人種で家の中はどの家も素晴らしい。
モデルルームのような家ばかり。
私はナポリの貧民街にあるスリの家にも行ったことがあるが
そこもすんばらしかった。
しかしこの家はどうも違う・・・・
いただいておいてまたまた失礼だが
中に入っているリガトーニも、久々にこんなの食べた!ってほど
scadenzaなものだった。
日本語に訳すと憚れるが、‘かなり品質の悪い・いわゆるプラスティック麺‘
日本にも安売り店で特価¥145(500g)なんてあるじゃないですか、
あれ。
あれは粉の品質も去ることながら超高温乾燥してるので麺がもうプラスティックになっている。
固くて固くてちょっとやそっとじゃ消化が・・・・
いつもカムットかファッロのアサクラパスタに慣れた舌と胃腸にはかなり
しんどい・・・・あぁこんなご馳走になりながらこんな事を書いてしまっ・・・て・・・・ごめんなさい。
どうやらこの家はかなりギリギリの生活をしているらしい。
セコンドピアット〈メインメニュ)は
これが出てくると3歳の娘・レベッカが大喜び。
どうやら鶏を飼っているらしく自家製の卵で作ったとのこと。
これを皆で8等分していただく。
おいしい!
しかしあとは何一つなし、
デザートももちろんない。
いや何度も書くがいただいておいて失礼だが
これほど清貧なディナーをご馳走になったのは始めてかもしれない。
私は今、100%ではないがほぼベジタリアンの生活をしているので
私にとってはとてもシンプルメニューでありがたかったのであるが
ん~~これは話をよく聞かなければ・・・と。
食事中はアントネッラが私に
なんでまたオリーブオイル屋をやってるのか?
とたずねられ
十数年前のイタリア生活・料理修行の事、オリーブに開眼した事、
アブルッツォで自家栽培のオリーブを作っているなどを
ぺ~らぺらと話した。
ウンウンとアントネッラは頷きながら私の話を微笑みながら聞いている。
私の話が一先ず終わると
アントネッラが12年前からこの地に住み始めた話、
なんとミラノから移り住んできたとのことだ!
‘え~~~‘と私は大声を出して驚く。
純粋なウンブリアの地元民ではないのだ。
生産者でこういう移り住み人も始めてだ。
オリーブ畑付きの家を自分で買ってまず三人いるうち子供の末っ子の息子と
住み始めたそうだ。
ふ~~ん、ダンナはいないのか?(とは聞かないが、ダンナらしき人がいないしその話もしない)
オリーブも住み始めたときから家族だけで世話をし、収穫をし・・・と
語り始めた。
どうやら人を使わず自分を含めてド素人の家族だけでオリーブを作っていたらしい。
400本の木を持っている。
アサクラ農園の約2倍だ。
木も古く(年数のたった)、太い木だそうで〈私はこの時点まだオリーブ畑を見ていない)
どの位オイルが取れるのか?と聞くと
400~500リットルという。(アサクラオイル250mlにすると約2000本相当)
木は私の農園の2倍あるのに油はうちとほぼ同じ量の油しかとれない計算だ。
え~~~どうなってるの?
と私は又驚く。
アントネッラがいうには
オイルの売値が高いのでイタリア人は誰も買ってくれないという。
彼女は農薬も肥料も全く使わない、自然の栽培をしており
草取りなども手間がかかり〈トラクターを使わないので)
取れる量が少ないのでどうしても安くは売れないという。
それなりの値段で売るが売れないので剪定も出来ない収穫も人を使えない、
だから収穫するだけ無駄なので1/3は収穫しないでそのままほったらかしという。
あら~~~
私は驚くと共にもったいない!と。
だから生活もきつきつでギリギリなんだと。
決して悲壮ではなくやわらかく微笑みながらそう語る。
このフリッタータ〈卵焼き)も今日出来る精一杯のご馳走なのだと
彼女は明るくそういうのだ。