新『アサクラパスタ物語』/その⑩低温乾燥パスタの低温とは?

廃業することを決めたマリオさん。

 

わたしも相当にショック。

というのも、

 

 

こんなことがあった矢先だったからでもある。

パスタとは全く関係ないのだが、

 

 

オリーブ栽培や製造の記録を残す、

ということで、

 

アサクラアイテムのファンである

某所の某カメラマンから、

 

 

猛アタックを受けたのが2018年の4月だったか。

 

 

お客さまでもあり知人でもある

映像カメラマンI氏。

 

 

I氏の知り合いのカメラマンが、

わたしに会いたがっているという。

 

ぜひ時間を作ってほしい、

と、ずい分ご無沙汰していたI氏だったが

 

そんなことを突然言われ、

 

 

その方に会ったのがそれからすぐ。

2018年の5月だったか、6月だったか。

 

その女性カメラマンのO氏と都内で会い、

 

そして会って意気投合!

 

 

イタリアでのわたしが製造するアサクラオイルの記録や

その他の生産者の記録を残そうじゃないか!

 

と大いに盛り上がった。

 

が、

わたしは、

 

えーーーー

それって、めんどくさーーー

 

もちろんタダってわけにはいかないだろうし。

 

 

カメラマンと映像マンと、

二人で来るという。

 

 

とても『嫌です』とは言えない状況に

わたしの心の中は複雑。

 

 

しかしながらこの二人の勢いはすごくて、

 

のらりくらりと来年にそれを持ち越すのも

更にめんどー――と思い、

 

 

『じゃあ、今年の収穫の秋にでも来る?』

と言ってしまった。

 

言ってしまった――――――💦

 

 

そして、

本当にそのお二人、(イタリアに)来たんです(笑)

 

 

ほぼ手弁当で来てくれたのは

ほんとうに、ほんとうに、

 

ありがたかったし、

 

 

その時、撮影した映像・画像、

いま現在も、

 

 

ものすごく役に立っている。

 

マイケルのわら一本、アントネッラさんのアックアサンタ、ジョバンナさんのオルチョ、

そしてわたしのアサクラオイル。

 

プロのやることはすごい!

を初めて実感した2018年の秋の三人でのイタリアでした。

 

 

それら一連の映像・画像は全部、

 

 

その方たちの作品でございます!

 

 

今だから言える、

 

いや~来てもらってよかった、

撮ってもらってよかった、よかった。

 

 

と心からそう思うし、その後であり、今であります。

 

 

2018年に

オリーブオイル産地と生産者、アンチョヴィと、

 

とてもいい記録が残せたのであります。

 

 

ついでに、

アサクラパスタの製麺所、マリオさんのところにも行き、

製麺所とマリオさんのインタヴューの記録も残した矢先、

 

 

のマリオさんの決断でした。

 

 

編集ですばらしい映像になったマリオさんの製麺所編。

 

廃業は腰が抜けそうに驚いた私。

 

 

しかし

状況は悪化するばかりの製麺所の内部。

 

 

悪いスパイラルに入って

どうにもこうにも行かなくなったらしい。

 

 

いままでの状況が今までのようにいかなくなる。

 

今までのようにいかなくなる、とは、

変化しなければならない。

 

 

そういう時に人はものすごいストレスがかかる。

 

苦悩の上での決断であったと思うし、

それらを推し量ると、

 

いろいろな感情が湧き上がってくる。

 

 

そして次に頭に浮かんだのは

 

パスタの原料の指定農家さん

クリスチャンやフィオーレさんには『種』を蒔いてもらってる関係上、

 

わたしがパスタをやめます!

とは言えない。

 

 

特にクリスチャンの古代麦ファッロは、

 

彼の畑のほとんど、

日本向けアサクラパスタ用に加工される為、

 

彼のつくる原料パスタこそ、製造を止めるわけにはいかない。

 

 

たっぷりある

日本・会津倉庫のマリオさんのパスタが無くなるまでに

 

 

次の製麺所を見つけなければならないという

課題が次に降ってきた。

 

 

どうしよう、どうしよう、

どうやって次の製麺所を見つけるのか?

 

 

わたしは、あるイタリア人のオーガニック食品に特化した

バイヤーを思い出した。

 

 

シチリア人のアンジェロさん。

 

 

ハイクオリティーのイタリア産オーガニック食品を販売、卸、

シチリアで何店舗もビオショップを経営するやり手。

 

 

アンジェロさんも、

マリオさんのパスタを仕入れていた口だ。

 

 

彼も困っているはずだから、

 

わたしと同じように、

新しい製麺所を探しているに違いない。

 

 

思い立ったら吉日!

彼に連絡を取るとすぐに返信があり、

 

 

シチリアにいい製麺所があると言う。

彼はその製麺所にすべてのパスタ製造を変えたという。

 

レイコもそこにしろと言う。

 

 

『じゃ、その製麺所の乾燥工程は何℃?』

と聞くと、

 

どういうわけか、温度を言おうとしない。

 

 

もちろん低温乾燥だよ、

とだけ、彼はメールしてくるが

 

具体的な温度を知らないのか、言いたくないのか、

 

 

とにかく製麺所に実際に行かないと決められないので、

そこに行きたい旨を伝えると

 

 

有難いことに同行してくれるという。

シチリアの某空港で待ち合わせし、

 

彼の車で

その製麺所まで連れていってもらえることになった。

 

 

 

そして見に行った製麺所が、

 

まあ、それはそれはでっかい、工場だった。

 

 

女性がオーナーと言うことは聞いていたが、

なんと、若い美人!それにしても若すぎる。。。大丈夫か。。。。。。

 

製麺所の歴史やら、もろもろを質問し、

そしていよいよ製麺所内に移動、

 

ってなったときに、

応接間にあるサンプルに目が釘付けになった。

 

 

きれいに並べられた自社製造のさまざまな種類のパスタ。

トマトやバジリコの練り込みパスタもあった。

 

袋に入ったそれらのパスタを見、

 

 

こりゃだめだ!

とすぐわかった。

 

 

ロングパスタは、

見るからに、高温で処理されたパスタだった。

 

 

内心、無駄足だったと思いながらも

 

 

上から下まで白衣に身を包み、工場内部に入ると、

加工場はビッグファクトリー。

 

 

マシーンのある心臓部に入る前に見えるストックルームには

 

スーパーマーケットでもたまに見かける、

ちょい高級なパスタメーカーのラベルが貼られた箱が

 

山積みになっているのが見えた。

 

あ、あのパスタはここで作ってるのか!

それ以外にも、

一般で売られているちょい高級パスタが見える。

 

 

少しずつ、加工心臓部に近づくと

あった、あった、乾燥機が。

 

 

そして

『何℃ですか?』

 

とやっと製麺スタッフに一番知りたいことが聞いた。

 

スタッフさんは乾燥機のデジタル液晶画面を指さし、

わたしは目線を移すと『65℃』とある。

 

65℃!

一応、低温乾燥の範疇だなと。

 

 

先ほど事務所で見たのは、

見るからに茹でたら、つるつるシコシコの麺だった。

#つるつるシコシコに見えるパスタは高温乾燥

 

 

あれは食べられない!と見た目で感じたパスタが

65℃で乾燥されている、という事実に

 

驚いた。

 

 

小麦・麦に含まれるたんぱく質が凝固し始める温度は60℃前後なので

65℃は問題ない範囲?か?

 

 

とわたしはずっと思っていたので

この65℃で乾燥されたパスタがどのような食感なのか?噛み応えなのか?は

 

今この時点ではわからない(知らない)。

 

 

今すぐ茹でて確かめたい!

 

と思ったが

イタリアの水で茹でてもあまり参考にならないので、

日本に持ち帰り日本の水で茹でなければ!

 

 

ちなみに、マリオさんのパスタは、

 

最高55℃(ただし30分程度の全工程の内のほんの一瞬)

メイン乾燥は40℃前後でロングなら30時間以上かかる。

 

 

この製麺所とマリオさんの製麺所には

20℃の差があるとどのような食感なのかは、

 

全くその時は判らなかった。

 

 

そして帰国し家で茹でてみたら、

全くお話にならない硬さだった(笑)

 

 

65℃!だめなんだ~

 

一般品よりはまだましな茹で上がりの見た目(色と“しなり”具合)ではあったが、

噛み応えと胃に入ってからの食後感はもうだめ。

 

折角シチリア島まで行ったが、撃沈。

 

 

そうかそうか

パスタはやはりメイン乾燥40℃~50℃以内でないと

 

もう成分変化が著しく消化が難しい。

 

温度が5℃上がるごとに

胃内での消化時間や分解、吸収など、

内臓負担は多大なんだというのが

 

この製麺所に行ったおかげでわかった。

 

 

撃沈はしたが、

わざわざシチリアの製麺所に行ったおかげで

大事なことが学べたのである。

 

 

無駄足のようで無駄足ではなかった。

 

             次号に続く

※シチリア名物・マジパン『フルッタ・マルトラーナ』(アーモンド紛と砂糖で作る甘んまいお菓子)