順調にアサクラパスタは市場に認められていくと共に、
輸入量は増えていったのだが、
だんだん雲行きが怪しくなったのは、
2017年あたりから。
マリオさんの製麺所の右に出る製麺所はない!
“世界一の製麺所”と思っていたわたし。
世界中のオーガニック由来のバイヤーから
支持されていましたから。
ある時は、
製麺所に外国人の家族が
イタリアにバカンスに来たついでに見学しに来ていた
なんてことも
わたしはたびたび見た。
自分たちが食べている特別なパスタを作る製麺所を訪問、
アレルギーの子供と共に
自分たちが食べているパスタが出来るところを見に来る。
その発想に驚くと共に、
意識が高く、
その家族にとって、この製麺所は特別なんだろうな、
とつくづく思わされた。
その外国からの訪問者と話してみると、
『娘がアレルギーだがここのパスタなら食べられる』
『この製麺所のパスタが好き!』
『特別なパスタが食べられるって幸運だわ』
と本当にうれしそうに話す。
わたしがおしゃべりしたのはアメリカ人とイギリス人であったのだが、
遠く離れて住む人に、
必要としている人の手に届いてるってことと、
世界の人たちから
このように支持されている製麺所、製造所があるってすごい!
とそういう人たちを見ると思わされた。
実際、この製麺所のパスタは大人気で
受注でいつも注文書が山のように積み上げられている。
わたしの注文はいったい、何番目にやってもらえるのか?
その注文書の山をみながら
がっかりしたこともあった。
世界的に人気の製麺所であったのは間違いない事実だった。
ある時からその根底を揺るがす出来事が
起きた。
イタリア国内でも有名なイタリア食材メーカー
こだわりのイタリア食材を扱っていた会社が傾いた。
業務拡大に無理が生じ、
マリオさんはこのメーカーのかなりの量のパスタを製造しており、
そのメーカーがパスタ代を支払わない。
支払いが滞り始めてから
偶然か、
わたしにも火の粉が降りかかってくる💦
わたしのところに到着したショートパスタの
リガトーニ(直径1cmほどの空洞のある円柱型のパスタ)が
茹でると割れる、
という現象が始まりだった。
製造の不具合でしょう!と
マリオさんにクレームを伝えると、
割れるパスタの原因は、
製粉の仕方の問題と言われた。
アサクラパスタは精白せずふすま部分、
麦の外皮部分も含まれるため、
胚乳部分以外の外皮・ふすま部分が粗い製粉だと
そうなりやすくなる。
わたしは
粉の状態を毎回確認できるわけではないので、
パスタになってから、うまくいかなかった!
となってしまうのが常で、
国内食品メーカーの倒産から、
頻繁にそのようなパスタの不具合が
多くなってきた。
製粉所に問い合わせると、何も問題なかった、
うちのせいじゃない、と言う。
これも真偽のほどは判らない。
しかしずいぶん経ってから判ったことは、
製麺所の機械や職人は変わらないのに、
『資金繰り』でお金がうまく回わらなくなるということが、
どういうことなのか?を思い知った。
つぎつぎに弊害が出てきたのを見せられた。
つまり製麺所内の経営バランスが取れなくなっていく。
(結果論だが)
そして到着するパスタ、
長い型のスパゲッティにも
不具合のあるものが届くようになる。
これは間違いなく製造でのなんらかの不具合なのだが、
イタリアから届いたものを返品するわけにはいかない。
製麺所側が不備を認めない限り、返品しても意味がない。
また返品するにしても、膨大な輸送料が生じる。
それを保証するなんてことはイタリア側はしない。
そして麦の生産者、
クリスチャンやフィオーレさんの指定農家の貴重な原料で
製造しているため、それらを破棄することは到底できない。
そこからは
お客さまにはありのままを伝え、
このパスタ、折れやすいです、割れやすいです、
と説明し、
問題のあるパスタを販売した始まりであった。
そしてなんとなんと、
想定外のことが起こった!
マリオさんは製麺所を閉めるという。
※倒産ではなく廃業
次号に続く