コラム内容
『昔ながら』『伝統製法』は淘汰されるのか?
ショートパスタをセールしています。
というのも、頼りにしていたアサクラ基準の製麺所が廃業すると聞き、駆け込みでクリスチャンの在庫の原料を全てパスタに加工してもらい今までにない量が届きました。
賞味期限の都合もありペンネやフジッリなどのショートパスタのみのセールです。
ペンネを除きショートパスタは現・在庫分で終了になり、新しい製麺所では作らない予定です。
さて、新しい製麺所(最初の製麺所から数えると5軒目)は目途がついているのですが、今までのようなパスタにはならないというのが正直なところです。
横道にそれますが、会津若松市内に古式製法の菜種・ごま油を製油する全国に名の知れた製油所がありましたが数年前に廃業されました。
跡継ぎがいないというのが理由のようでした。
おいしい菜種油でしたが廃業されその油はもう食べられなくなってしまいました。
ただ、この製油機はクラウドファンディングで家族ではない方が引き継ぐことになりました。
製油機はもちろんですが、職人の勘と経験で製油機を操作していたからこそおいしい菜種油でしたが全く違う人が製油し、前に近いものが出来るには時間がかかると予想しています。
農産物である原料と伝統の加工機械の関係を理解し製造するには経験が必要です。
その経験こそが味に繋がります。
製麺に話を戻します。
これまで4軒の製麺所の機械は全く同じものではありませんが、基本的に同じでした。
パスタは①『水と粉を混ぜ練る』②『型抜き』③『乾燥』の3工程でできます。
ところが、水と粉を練るといっても練る速度は?入れる水の質と温度は?、練り込む容器中の空気圧は?、練りが完了した生地は管を通り型抜きするところまで運ばれますが、管を移動する速度は?、生地へかかる圧力は?、型抜き後の乾燥温度は?、湿度は?、これらの工程で粉と水が合わさるところから材料に負荷がかかります。
この負荷(速度や圧や熱)が少なければ少ないほどおいしいパスタに仕上がります。ソースに絡めると気が付けない素のパスタの味。
パスタに甘みや旨味、風味があるなど意識している人も少ないと思います。
また食感も麺をすすって呑み込む癖のある日本人にはパスタをよく噛める人も少ないので、食感が今までのパスタと全く違うことに気づく人も少ないです。
また、もち米と交配した旨味の濃い米『こしひかり』のように改良して味が濃い小麦もあり、品種の特性で味の濃いパスタと、原料に極力負荷なく製麺されたパスタとは全く別次元の話です。
加工工程で原料の良さを失わずに特性を生かしたパスタを作れる製麺所はイタリアにはもう数件しかありません。
毎年数件ずつ廃業・倒産しています。
なぜ後継者が育たないのか?
それは二四時間稼働の昔ながらの製法の製麺所は肉体労働であり職人の勘所で工程を見極めなければならず、時間に縛られ手間がかかります
極めつけは経済的なリターンが少ないからです。後継者が育たないのはそこです。
伝統製法の製油所が廃業したように、伝統製法は淘汰されているのが現状です。
今回4軒目の製麺所の廃業は業界内でもショッキングなことでした。
昔ながらのまっとうなパスタはもう食べられなくなるのは時間の問題です。
時代の流れで仕方ないのでしょうか。(れ)
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