新『アサクラパスタ物語』/その⑦麦をつくる人

なんでもそうだが、

ぱっと目の前に必要なものが全て現れるわけではない。

 

店に行けばたくさんのものが並んでいるが

それらは、

 

色々な場所や人を経てそこにある。

 

 

当たり前っちゃ当たり前だが、

パスタも加工されたものを目にするだけだったが、

 

そのパスタは、

だれかが小麦の種を蒔き、育て、収穫し、

それを脱穀し、

 

別な場所にある製粉所で製粉し、

さらに別な場所にある製麺所に持ち込み加工してもらう。

 

そしてやっと袋に入った乾燥パスタが完成し、

更に輸送され私たちの手元に届く。

 

 

この一連の流れが明確だったら安心だよね?

 

 

オリーブオイルも、

収穫後、搾油後、輸送後、

 

様々な場面でグレーゾーンがあるのを見てきているので、

 

それらが不明なのは避けたい。

 

 

わたしは一軒物のシングルエステート、

その人だけのオリーブ果実で作った

オイルを求め現在に至る。

 

 

ある時から、

自然に、

 

パスタの原料もそうだったらいいな、と思うようになっていった。

 

 

特に注意したいのは、

土壌だ。

 

 

麦は、

『化学肥料と農薬をセット』にして栽培するのが一般的で、

そういうものでなく、

オーガニック栽培の原料のみでアサクラパスタは作ってきた。

 

しかしながら

どこで?だれが?どのような方法で栽培されたか?

は重要極まりない!

 

オリーブオイルの普及をすればするほど

その大切さに気付かされるわけです。

 

 

それは、食べる人の反応から気づかされる。

 

 

無肥料・無農薬という栽培は、

たくさんの量を収穫することはできないが、

土壌環境を過剰に乱さずに栽培する方法だ。

 

つまり

それを食べる人間、わたしたちにとって、

身体に負担のない作物がいただける。

 

なんでかって、

植物は、根が土壌に深く入り込んでいく。

 

根から様々なものを吸収して育つから

土壌環境そのものが作物をつくる。

 

非常に単純なことだが大事なこと。

土壌環境が、作物のすべてと言っていい。

 

 

つくる人(生産者)は、

作物と土の関係をどのように考えて耕して作物を育てるのか?

 

つくる人(生産)の生き方そのものが

まんま畑に反映される。

 

 

肥料を施さないと作物は出来ない、

という一般の考えを覆す自然栽培・無肥料無農薬。

 

わたしはこれに魅了された。

出来ないはず(と思い込んでいる)のものが出来る!

 

 

土にはそのような力がある!

 

 

そう知った時にこれ以上の栽培法はない!

自然栽培由来の原料でパスタを加工したい!

 

と思うようにじわりじわりとなっていった。

 

・・・  ・・・  ・・・  ・・・

 

クリスチャンと初めて会った時のことを

よく覚えている。

 

山の中の小さな村のマルシェでパンを販売していた。

 

 

『古代麦ファッロの種を蒔いてくれる人を探しています』

『あなた、蒔いてくれる?』

 

 

彼は、

世界一周バックパック旅行をパートナーのミケーラとともにし、

 

長逗留したインドで貧困を見、

『食べるものをつくる人になる』と

 

決めたんだそうだ。

 

その後パートナー・ミケーラの妊娠を機に、

生まれてくる子に安心なものを食べさせたい、

 

という想いが湧き上がり、

 

わら一本のマイケルと同じで

福岡正信著の『わら一本の革命』から、

 

無肥料無農薬で栽培する道を選んだそうだ。

 

 

マルシェでは

自分で作った古代麦ファッロで

パンを自分で焼いて売っていた。

 

ちょっとその状況にビックリした。

 

なぜならば、パンにしてッて・・

ずいぶん気長な方法で自家生産物を売っているのだな、と思った。

 

 

クリスチャン曰く

『自分のファッロをパスタに加工するなんて

考えたこともなかった』

『でもやってみたい』

 

と即答してくれた。

 

間に合うか間に合わないかのぎりぎりの晩秋だったその時、

種を蒔く時期にはきわどかったが、

 

マルシェを後にし、

わたしも帰国ししばらくしてからメールが来た。

 

 

『パスタ用のファッロを蒔いたよ』

『たぶん大丈夫と思う(発芽し育つと)』

 

 

と連絡が来た。

 

その返事を読み、

わたし、なんか大それたことしちまったかも!?

 

と内心思ったが、

 

なるようになるだろう、と

この機会の行く末は、

 

天に任せるしかなかった。

 

 

    次号に続く

 

 写真/初めてクリスチャンに会った時(左がクリスチャン)マルケ州の山の中のマルシェで