★7月号 イタリア古典レシピ探究の旅

2024年7月号通信

コラム内容

イタリア古典レシピ探究の旅

 9月に還暦を迎えます。今月のクローズアップの主役・極上オリーブオイル・アックアサンタの生産者アントネッラさんも70歳になったのを記念し、以前からの二人の小さな夢・南イタリアの古典レシピを巡る旅をしてきました。南全土は都合がつかず夢の三分の一ほど実現できました。イタリア半島・最南端の州カラブリア(長靴のくるぶしから下の地区)の人々が食べていた郷土料理、戦前戦後食べていた料理を探る旅です。

1954年生まれのアントネッラさん。戦後のベビーブームに生まれカラブリアで九人兄妹の五番の次女として生まれました。南イタリアは「山がない」ので森が少なく「水がない」厳しい気候風土で農業または酪農で生活していた人が大部分だそうで、昔はみな貧しかったそうです。
 5歳の時に父と死別し母アンナさんが女手ひとつで子供らを育てる為、彼女が15歳の時に家族で北イタリアの大都市・ミラノに移住。そして時は流れアントネッラさんは自分の夫に先立たれたのを機に縁もゆかりもないウンブリア州に移住し現在に至ります。オリーブ畑付きの古民家に住むようになり、一生産者となりますが、生産するオリーブオイル・アックアサンタが売れず、自家用で利用する分だけ収穫し後は果実を収穫せずに剪定もせずにいたところに私が2007年に訪問、アックアサンタを日本で販売するに至ります。

(アントネッラさんとの出会いの詳細はHPをご覧下さい)

母アンナさん譲りの料理上手なアントネッラさん。彼女の料理は、素朴で野菜の味を最大限に生かす素晴らしいものです。イタリア料理は元々シンプルですが、その極みが彼女の料理です。今回の旅は彼女が15歳まで育った故郷にまつわる地域を周り郷土料理や伝統の食材づくりを見て回る楽しいものではありましたが、旅が深まるほどにアントネッラさんのルーツが紐解かれ、彼女の料理上手の理由に合点がいきました。各地でご馳走になる料理はどれもアントネッラさんのエッセンスが散りばめられたものばかりでした。彼女の故郷の味はどれも懐かしい味ばかりでこれまで彼女の料理の仕方、素材の扱い方そのものでした。子供のころに馴染んだ味はずっと引き継がれるもの、そして母アンナさんが娘息子たちにしてきた軌跡を垣間見え感動的でした。

 イタリアの素材の良さは、私が住み始めた30年ほど前に気づき、ビックリしたものですが残念ながら最近のイタリアの野菜はあの頃ほどの味を求めるのは難しくなっています。しかしここにはまだありました!何気ない人参や玉ねぎ、ズッキーニ、トマト、普段使いの野菜で作った見た目は素朴すぎるものでしたがスープパスタの美味しかったこと!加熱すると、オリーブオイルと塩だけである程度は料理が成り立ちますが、野菜から出たスープの味に驚きました。『これだけでこの味!』『うそ!』と。
 南イタリアの気候風土はまだまだそのポテンシャルの高さは健在でした。アントネッラさんはこういう質の高い食材を食べ育ったのかと。その舌の確かさはこの気候風土と愛溢れる母の料理で培ったと実感しました。幼少期に何を食べたか、は将来に大きく影響しその人をもつくる、と思いました。

夫を亡くすというターニングポイントで自分の育った環境の記憶が起動し、都会から離れ移住先のウンブリアでオリーブオイルを自家栽培している今がある。すべてつながっていました。
 アントネッラさんのつくるアックアサンタ がどのオイルにも無いものを醸し出しているその訳が、この旅で明らかになりました。
 奇跡的にEUの補助金をゲットし、築140年の自宅を今、改装中です。そんな奇跡を導く彼女の生き方から私は多くを学んでいます。来年こそは改築したアントネッラさん宅で料理教室を開催します。会津クチーナの料理教室の一環で課外授業として行います。まずは会津クチーナで学んでいただきたいです。彼女のつくるオイル・アックアサンタも本当に美味です。搾油所のオーナーが変わり搾油機が一新し、最新の搾油機の凄さを実感しています。是非こちらもお試し下さい。                    

(れ)

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レシピ:ミニトマトのリーゾ(お米)🍅

★7月のクローズアップ

EVOアックアサンタ