イタリア2023夏報告・その②クリスチャン小麦の収穫

南イタリアから一気に中部へ!

 

 

マルケ州クリスチャンの住むカーリ・小さな山間の村へ。

 

今回の旅の大事な目的の一つ、

 

未だかつて見たことがない、

クリスチャンの小麦類の収穫に立ち会うこと。

 

 

南イタリアから、

北東(地図で上へ)に移動、

 

 

3時間半のところあたりでクリスチャンのお父さんと落ちあい、

そこからまた数時間、山間の道をひたすら走る。

 

 

車中、

クリスチャンのお父さんと初めて長話し

 

 

初めてクリスチャンのあれこれを聞くことができ、

びっくりするやら、笑うやら、

 

 

私は何にもクリスチャンのことを知らない!と

お父さんから話を聞いて初めて気づいた。

 

 

まだ若かりし頃、

あのクリスチャンも!

 

 

 

サッカー少年だったらしい。

今のクリスチャンからは想像できない・笑

 

 

クリスチャン(長ったらしいのでクリと略)の父は

リタイアし、

 

 

いまはサッカー関連のボランティアをしているんだって。

 

 

日本人女子のアスリートも受け入れているという。

本格的なサッカーリーグのなんとかってチームの役員だそうだ。

 

 

 

クリの父、

 

クリがサッカーで活躍した話や、

クリが就農するときのエピソードなどを話してくれた。

 

 

農業するって聞いたときは、

ビックリしたそうだが、

 

本人

の硬い意思に反対する訳にも行かず

 

 

 

彼の人生だから、

 

と私はそれ以上何も言えなかった、と。

 

 

ちょっと寂しそうに話していた。

 

 

クリ父なりの理想があったんだろう。

その辺り突っ込みませんでしたが、

 

 

親の思うとおりに

子はならない、のは世の常だね~

 

 

 

自然栽培で農業をしていることについて聞いてみると、

 

 

「よくわからないが」、

 

「あまり利益がないらしい」

 

「利益は少ないが日本のお客さんが皆いい人なので

その人たちのためにもやらなきゃいけない」

 

 

と、クリの父は、私の手前もあってか、

 

なんか複雑な境地で話してくれた。

 

 

 

そうだよね~

 

イノシシだの、天候だの、

コンバインがうまく収穫できず実を落としちゃっただの、

 

 

経験不足や山間部の不利な土地条件、

無農薬無肥料の為のリスクもある。

 

 

家族は、よくわからないが、

農業は大変、

 

 

はなんとなくわかり、

 

しかしクリ父はこうやって顧客である

私の送迎など、を快くしてくれる。

 

 

また

今夜は小麦収穫後の残務も手伝うそうだ。

 

 

家や、孫や、経済的にも援助しているんだと。

いろいろ内情も話してくれ

 

 

クリは何も言わないが、

決して余裕のある中で生活しているわけではなく、

 

そしてクリの両親もバックで支えている、と言うことを知った。

 

なんとなく想像はしていたが、やはり、だ。

 

 

 

クリ父と話をし、よーーーくわかった。

 

 

わたしはクリが作ったものを、

なるべく多く買い取るぐらいしかできない。

 

 

イタリア内での直接の小さな小売り販売より、

どーんといっぺんに出来た作物を

 

 

パスタに加工したり、

 

一度に大量に販売できる(輸出)方が、

人手がかからず

クリにとっては助かるのだそうだ。

 

 

ほとんどを一人で農業経営しているので、

致し方ない。

 

 

販路の心配まで生産者がしなければならないのは

本当に大変な事なのだ。

 

 

豆は特に流通が難しく、

私と埼玉のサンスマイルさんが協力してくれ、

 

 

日本での販売することが出来ている。

 

 

クリの農産物、ファッロ、軟質小麦、チェチ豆、レンティッキエ豆、どれも美味しい。

消費に協力、販売協力、

何卒、よろしくお願いします!

 

左がクリ父パスクアーレ

 

 

 

さて、現場に到着すると

 

 

「おーーーーー!」

「丁度いいところに来た!」

 

 

 

早く早く、とクリが向こうで手招きしている。

 

 

クリ父に挨拶もそこそこに、

クリのところに行くと、

 

 

大きなコンバインが待ち構えており、

それに乗れという。

 

 

階段を上らないと

運転席に入れないようになっている

 

 

ガラスで覆われた運転席は冷房入り!

 

す、涼しい~~~~

 

 

助手席に乗ると、見知らぬオトコが。

 

 

「さ~~~~しっかりつかまっててよ!」とオトコ。

 

急こう配に停車しているコンバイン。

運転席から前に転がり落ちそうなほどの急な坂だ!

 

 

こ、怖い。ジェットコースター並みだ。

 

 

そして発車!

 

ぎゃ~~~~

 

コンバインがひっくり返える~~~~う

 

 

私「あれはなんですか?」

 

運転席から見える

いい色に熟している麦畑の麦は何だろう。

 

 

オトコが涼しい顔をしてハンドルを握っているので

やっと安心できて質問してみた。

 

 

 

オトコ「軟質小麦さ」

 

私「ああ、ジェンティルロッソね」

# ティラミスやロールケーキを作る時のあの粉

#パンケーキミックス粉にも使ってます(欠品だったのでファッロで差し替え)

 

 

クリはコンバインを持っていないので、

 

麦の収穫時はこのオトコに刈り取ってもらう。

 

 

そうかそうか、

 

このオトコがいつも収穫を請け負ってくれる人か。

 

 

何年も前に、レンティッキエ収穫後、

どのぐらいと採れた?と聞くと、

 

 

「ゼロ」とクリがいう。

 

「ゼロ」ってどゆこと?

 

 

全部の実を刈り落してしまった

 

と聞いたときは、

 

は~~~?意味が分からない。

 

 

とクリに食って掛かったが、

その取りこぼしたやつはこのオトコだ。

 

 

そうかそうか。

 

ちなみにレンティッキエは

完熟すると鞘がはぜやすく、

 

完熟しているのを収穫するのはえらい難しいらしい。

 

日本の蕎麦のようです。

#蕎麦もはぜやすい

 

 

 

が~~~~~~っと爆音とともに

運転席の前にある刈り取りの車輪刃が回り出す。

 

 

 

ガァ~~~~~~ガラガラガラ~~~~

 

あっという間に刈り取られていくジェンティルロッソ。

 

このように刈るのか~

12時ごろから始め、2時ごろには全部刈り終える。

 

 

ちなみに

これがジェンティルロッソの穂。

 

麦穂に「ひげ」がないタイプ。

 

 

ジェンティルロッソを刈り取り、

コンバインにある程度溜まると、

 

トラクターに移し替える。

 

コンバインの筒からトラクターに吐き出されるジェンティルロッソ。

刈り取られたと同時に「粒状」になってるってことね、と

 

これを見ているとわかる。

 

 

そして全て刈り終え、

 

 

それらをクリの倉庫に移動し、

 

これでジェンティルロッソの収穫終了!

 

 

とはならない・・・・・のである。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

結局、都合2時間で刈り取りが終わるって

そんなもんの量なのかと。。。。

 

 

アサクラではこのジェンティルロッソを

年間1トンほど買い取っており、

 

どの程度、今年は収穫できたのだろう。

 

 

これが判ると、

 

クリの麦類の面積、刈り取り時間、総量で

40ヘクタールある管理総面積の大体の見当がつきやすくなる。

 

 

「見る」って、大事だ!

 

 

 

さて倉庫に運び、どうすんの?

 

と思ったが、

刈り取ったものはこうなりました。

 

倉庫の内部に積み、一日休ませる(ちなみにこれで全部ではありません)

 

基本、イタリアの麦は刈り取られた時には

からっからに乾燥されており、

 

もう出来上がった状態。

 

 

米のようにはざ掛けで天日干ししたり、

乾燥機に入れて熱で乾燥することもしない。

 

 

それだけ、イタリアの空気は乾いており

 

夏の初めに熟す、ってのも米と条件が違う。

 

 

 

2時間程度で刈り取りが終わる量は

 

ある意味たかがしれた量なので、

機械に頼るほどの量がないため、

 

この後の作業から人海戦術。マニュアル。

 

 

すべて人の手で処理をせねばならない。

 

を、初めて知った!

 

 

翌日まで、

炎天下刈り取り温まった状態の麦を広げて冷ます。

 

この作業からは私も手伝ったため、画像がない!

 

写真撮る余裕、全くありませんでした。

 

 

 

灼熱の太陽が沈んでから、

クリ、息子のジョバンニは上半身裸になり、

 

スコップを使って平らに麦をならす。

 

 

そして翌日はその広げたジェンティルロッソを

これまた人海戦略で袋に入れる。

 

この袋に2袋入れた。約2トンほどか。

 

もう、汗だく。

汗も、たらたらと垂れる前に干上がる。

 

 

水を飲みながら作業しないと危険な状態だ。

これが軟質小麦、ジェンティルロッソの全粒。

 

この状態で、私からの発注を待つ。

そして発注後は、

 

テベレ川の上流にあるウンブリア州の製粉所に運び、

 

 

川を動力とする石臼挽きでセミ全粒に挽いた粉が、

アサクラアイテム軟質小麦

「ジェンティルロッソ」になる。

会津クチーナのお菓子教室(ファリーナ)では

ロールケーキや、ティラミス用のスクエアケーキは

これで作る。

 

これでつくるからこそ風味と味が濃く、おいし~ケーキが出来るよ!

粉にはしっかり味があるので――――す!

 

クリスチャンの粉類でそれを実感できる。

 

 

 

ちなみに、この作付けから、

ジェンティルロッソリエート改め、「ジェンティルロッソ」になります。

 

「ジェンティルロッソ」という古代種の軟質小麦の種と

別の古代種「リエート」という軟質小麦の種を

 

 

ミックスして畑にまいたのが「ジェンティルロッソリエート」でした。

 

 

しかし

リエートを混ぜない、

ジェンティルロッソ単一の種で昨年秋播きました。

 

 

ということで、

この収穫したものが次に入荷するときは

 

 

軟質小麦「ジェンティルロッソ」になりますので、

ご了承ください。

#しつこい?

 

 

 

疲れ切った私と息子のジョバンニ。

 

2日連続の小麦収穫、収穫後の後処理、

大変だ!

 

 

しかし収穫は始まったばかり。

熟し度合いの順に、

 

 

ジェンティルロッソ(軟質小麦粉用)

カッペッリ小麦(パスタ用)

 

ファッロ麦(パスタ・粉用)↓↓↓ひげがある穂ファッロ。

豆類のレンティッキエ(レンズ豆)

↑レンティッキエ・5-6月の長雨後、7月の猛暑の影響で、

鞘が枯れているのに(収穫期を迎えている証拠)

木や枝の部分が緑色という奇妙な現象。

 

 

長雨の後のいきなりの猛暑で、

 

木がまた目覚めて成長し始めちゃってるそうです。

中をむいてみると、

まだ未熟。収穫はまだできない状況(7月中旬時点)

 

そしてチェチと続きます。

こちらはまだまだ青い。

収穫は8月になってからとのこと。

 

 

イノシシに荒らされた形跡があり、

収量が気になるところ。。。。

 

 

この時点、ジェンティルロッソ収穫終了は、

収穫のはじまり!

 

 

まだまだ終わりまでは果てしない!

 

2日間の手伝いでヘロヘロの私。

 

クリは隣町への用事ついでにバールでジェラートを

ごちそうしてくれた!

 

 

「レイコなんにする?」(真剣なまなざしで私に好みを聞くクリ)

 

私は迷わず、

フィオールディラッテ(ミルク・バニラではなくミルク)

 

そして

ダークチョコにヨーグルト(いつもの定番を変えることができない性分)

 

 

イタリアは、やっぱジェラートでしょう!

 

収穫のご褒美、おいしくいただきました(^^♪

 

 

 

クリは、

 

例のコンバイン男と対になり、

日本でも米の田植え、稲刈りを委託して

全部やってもらう農家の人がわんさかいますが、

 

 

イタリアも同じで、

 

この地区は特に、

アップダウンの多い山間部の麦類の収穫は

 

機械と人手がないと難しい。

しかも高齢化。

 

 

クリとコンバインオトコでそれを請け負っている。

近隣の人の麦の作付け(秋)、刈り取り(夏)を

 

 

この時季、毎日日の出と共に出かけ、

 

収穫したのものを

私が手伝ったように、

 

全請負農家さんの為に同じ作業をやるため、

 

帰りは夜中、mezza notteと言っていた。

つまり夜中の12時に帰宅だそうだ。

 

 

身体大丈夫か、と思うが

自分の身体は自分が一番知っているはず。

 

 

私は彼を信じる。

 

 

毎日過酷ともいえる重労働するクリ。

 

 

請負仕事も、

手伝うというだけでなく

 

副業として収入の為にもやっている。

 

 

山間での農業、自然栽培、

条件は厳しいが、

 

 

彼の考えは、

この道を選んだってこと。

 

 

彼の生き方は、この道なのだ。

 

淡々と作業をするクリを見ていると、

元々の風貌がジェスーキリストのようでもあるのだが、

 

 

背後に後光がさしているように

彼の仕事している姿は尊い。

 

 

 

それを見ながら、

 

せめて生産された彼の農産物は

きちんと価値のわかる人に渡さねばと、

 

 

強く思いながらクリの家を後にした。

 

 

収穫と言う喜びの裏には、

汗水たらし労働したクリと言う

 

作る人がいる。

 

 

しっかり受け止め、

日本のお客様にお渡しせねば、

 

と心新たに!

 

 

クリの農産物、なによりおいしい。

 

 

たくさんの人が

それを知って食べてくれることに感謝。

 

そして応援してくれる人もたくさんいる。

 

 

そしてまだ知らない人になんとか知ってもらいたい。

 

 

イタリアの小さな村でひたすら、

生きる為、そして自然環境を考え

 

このような道を選んだ、生産者クリの存在をだ。

 

 

そして食べてほしい。

 

 

彼のつくった農産物を

生かし

 

小麦ってこんなにおいしいの?

ひよこ豆、レンズ豆って、こんなにおいしいものなの?

 

 

と開眼してもらえたら、

うれしいな~~

 

 

応援してもらえたらさらにうれしいな~

↑↑↑ 軟質小麦ジェンティルロッソリエートのシュー/松﨑ゆみ指導・私作

 

アプリコットのコンフィチュールタルト(ファッロ粉)/nowhere佐藤素子作

 

 

 

チャオ