『活〆め』『神経切り』の
身だけ見てもわからない部分を昨日書いた。
そしてそれだけでは済まないのが鱧だ。
私たちの口に入るまで、
これほど手間のかかる魚もないのではないかと思う。
鱧は体長1m前後もあり、
鱗のないぬめりがあるウナギを巨大化したような形状が特徴で、
そしてウナギやアナゴのように縦に割いて調理する。
筒状にぶつ切りしては絶対食べられない。
なぜかというと、
身全体に緻密に小骨が広がっており、
それを取り除かくことは不可能なため、
『骨切り』という工程がさらに必要になる。
イワシやアジの三枚おろしのように、
包丁で小骨部分をそぎ落とすことが出来ない。
ニシンという魚はご存じだろうか。
生のニシンを塩焼きにすると、
細~~い小骨があり、
焼くと身から骨が外れやすくなるので、
そのまま焼いて、
箸で身だけをほぐして食べることが出来る。
鱧はそれが出来ないから骨ごと食べるしかない特殊な魚なのだ。
そう、
鱧は小骨を取り除かないで食べようって、人は考えたわけだ。
そしてその手段が『骨切り』で、
専用の包丁で皮一枚残し、細かく身を切り落さないように
骨ごと身を切る。
こんな風に。
わたしも見せてもらいましたが、
重い専用の包丁で、
ある程度のスピードで切っていく姿は、ほれぼれ~
簡単ではないのは見てわかります。
何せ皮を残さねばならない、しかし身と身の間は極力間をおかず。
身が剥がれ落ちないように。
畑中さんによると、この骨切りの技も熟練が必要で、
上手に切れていないと、口の中で骨が当たり、
じゃりじゃりと、とても食べられない、とのこと。
私も今までそういうじゃりじゃりの鱧は料理屋では出てこなかった。
ちゃんと骨切りされていたんだというのがわかった。
今だからその意味がわかる。
この骨切りしなければならない、
という一つの特殊な工程があるからこそ、
出来上がった鱧料理の見た目の美しさがあるのだ。
加熱するとぱっと花が咲いたような形状になり、
牡丹の花、とも形容するね。
牡丹の花にするために骨切りするのではなく、
鱧の特異な特徴の為にそうせざるを得ないために、
あの美しい牡丹の花の形状があるのだ!
う~~ん
料理って面白い、そして文化だ!
人の叡智はどこまですごいのだろう。
鱧の湯引き、鱧のお吸い物、
あの牡丹の花のような美しい形状は、
どう猛で不細工な鱧という魚の変な特徴のなせる業だったとは。
料理屋で
湯引きの梅肉添え、
そして吸い物に一切れ沈んでいる鱧をみながら
そんなことを知る由もなかった。
そして今回それを知ることが出来た。
しか~し、ここまででは
畑中さんの天然鱧のおいしさの、
本当の部分ではまだ理解はできていなかった。
次号に続く
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