イタリアの物流の混乱も収まり、
欠品していたオルチョがやっと入荷しました。
ほっと一息なのですが、
今回のオルチョの味が、今までと違うのでその辺りをご説明したいと思います。
あらしぼりご予約時にも説明をしていますが、
2019年産オルチョは搾油所が変わりました。
今までは
石臼でさっと潰してから、機械カッターで更に粉砕する、という
南イタリアらしい果実の粉砕の仕方です。
大昔はどの搾油所も石臼を使うのが当たり前でしたが、
石臼ですと「つぶした瞬間にオリーブのオイル部分が染み出し空気と触れ」
↓
酸化がはじまります。
そこでこれまでのオルチョの搾油所は果実をさっと石臼でつぶし、
すぐ粉砕機に入れまた更に細かく粉砕、
という工程を経ていました。
石臼の良さもあり、丸みのある甘みのあるオイルに仕上がります。
(やり過ぎると過剰に酸化する)
しかしながら、時代と共に何でも変化します。
搾油所はオーガニック認定を取得しておりました。
オーガニック認定された畑のオリーブをそこで加工すると
オーガニック認定とラベルに記載することができます。
認定取得はただ(無料)ではなくお金がかかり、
需要の減少(農家さんの)による搾油所の事情で認定取得を取りやめました。
この搾油所で搾油をするとオルチョも必然とオーガニックと記載ができなくなります。
そんなわけで
生産者の判断で、認定を持った搾油所に変えました。
その新しい搾油所は石臼は不使用の為、
石臼によるオイルの味わいがなくなり、
よりスパイシーで辛味のたったオイルに仕上がります。
オルチョは、在来種のオルティチェという品種の配合が多く、
これがオルチョがオルチョである、特徴をだしております。
が品種だけではなく、様々なプロセスがオイルの味になっていきます。
オリーブオイルの味わいは、
主に
①オリーブの品種の持ち味
②どの時期に収穫するか
③収穫から搾油までの時間と環境
④どうやって搾油するか
が大きく左右します。
今回は④の方法が変わるので、個性が変わるのは必然なのです。
私は昨年秋、収穫のはじまりに、オルチョの畑に行き、
どんな搾油所か見てきました。
しぼり出てきたオイルを味見し、びっくり仰天!
めちゃくちゃ辛くて苦い。(アサクラオイルやわら一本の白ラベルのよう!)
※この画像はまだオイルが口の中に入っていません、この後の画像がない!
隣、サルバトーレもドキドキ顔
これは収穫初期のまだ完熟していないオリーブを絞っていますので、
ある程度の辛味・苦みは普通です。
それにしても(テイストが)すごいので、
私がびっくりしたのを
ジョバンナさんの夫、サルバトーレはいろいろ考えたのでしょう。
私はその自分で味みたオイルが、どのようになって届くのか?
ドキドキしてあらしぼりを待ちました。
ただし、その後オリーブは一か月以上かけて収穫し、
日ごとにオリーブは熟していきます。
毎日毎日、実はより熟していき、日ごとオリーブオイルの味わいは変化していきます。
そして大きなタンクに品種ごとに詰めていきます。
そうして果肉分離(オイルに含まれる微細な果肉を沈殿させ分離する方法)のデカンテーションが終了すると、
オルチョの500㎖、750㎖に瓶詰めしていきます。
その瓶詰時に、
品種ごとの絶妙な割合で「オルチョ」にしていくのはサルバトーレの役割です。
最初の辛いやつ、後の熟した丸みのある味、
これが一緒にブレンドされ、全体に均一のオルチョになっていきます。
搾油所で搾油したてのオイルの味が非常に辛くて苦い。
そしてその辛味苦味こそが新鮮な証拠、新しい証拠、
時間がたつにつれ、古くなるにつれ、それが揮発しなくなっていきます。
辛味苦味は真っ当なオイルの証拠なのですが、
これが石臼だと和らぐのです。
それは良い、悪いというより好みの問題です。
あと、オルチョのように、オーガニック認定など、
生産者のコンセプト、がありますから。
私は基本、「生産者のこれに決めた」に従うようにしています。
私は認証は無くてもいいかなーとも思っていますが、
今回も、まず違う搾油所でやってみる、
というジョバンナさんとサルバトーレの希望に従ってみたわけです。
このような経緯で4月に届いたあらしぼり、
開けてびっくり。
なんと!あの辛味・苦みがない!
どうして?と問い合わせたら、
「あまりにも今までと違う味にレイコが驚いたので、
あらしぼりは、収穫最後の完熟したオリーブのオイルタンクのものを多めに入れてみた」
と言うではありませんか!
事前に言ってほしかったですが、後の祭り。
そしてそれはやらないでいい、と伝え、
次回からの瓶詰はいつも通りの配合でお願いします、と
お願いしたのが数日前に届きました!
欠品しておりましたが、
これから発送するものに関しましては
(上記)それを踏まえたものになります。
食べたらビックリの辛味と苦みです。
あらしぼりを既に味わった方はびっくりするでしょう!
またいつもオルチョを召し上がっている方もびっくりするでしょう。
いや、数年前の日照りの時のオルチョもこんなスパイシーな味でした。
つまり
なにこれ?同一オイルとは思えない味わいです。
この一年、来年の新ものが来るまで、
今年のオルチョはそういうものになります。
それを踏まえていただき、
同じオリーブ果実で、搾油の違いで、
こんなに変わるのか?を感じていただけたらと思います。
そして工業製品ではない手作り品とは?
生産者の成長や経験値、
これは受け止めるお客様のご理解があってこそです。
今年のオルチョ、20年目にして活性化か?(色々な意味で)
そして更に皆様に愛されるオルチョになれるよう、
これを踏まえ来年はどうするか、
きちんとジョバンナさんらと話し合い、最大限彼らを尊重した
決断をしていきたいと思います。
ちなみに、辛味苦味がありますが、
料理に使えば全く気になりません。
その辺りも料理するときに、
オイルと素材との化学反応に向き合い、
ご自分はどう感じるか?
を愉しんでいただきたいです。
以上、2019年産オルチョの味わいが突然変わる!
の理由でした。
引き続きオルチョ2019産をお料理でお楽しみください
追記/なぜ機械粉砕にするのか?
これは極力空気と遮断する為、酸化しないようにするためです。
また遠い地域への輸送や様々な環境変化による酸化のダメージはいろいろなプロセスに存在します
酸度の低いオイルはそのような環境変化によるダメージに強くなります。