アンジェラは毎食の料理に
違う献立、という約束をちゃんと守り、
あれやこれやといろいろな料理を作ってくれた。
つくる時は材料の調達からほぼ一緒に、
メルカートに行ったり、
漁師の営む魚屋だったり、
時には農園の周りの自生のハーブを摘むところからだったり、
料理は必ず工程をきちんと説明してくれた。
雨が数日降り続いた後の晴れ間のある日
散歩しようとバケツを持たされ
ぬれた中、何で散歩?と不思議だったが
庭に出ると
エンツォがバケツ片手に何か探して歩いている。
「レイコもとるんだよ!」
と言って見せてくれたものはなんと
バケツの中にはカタツムリが入っている!
カタツムリって、そういえば雨の後に現れるな~
なんて子供の頃を思い出しながら
庭の草むらに目を凝らすと
いるわいるわ!
葉っぱの上にわんさわんさと!
日本にいるカタツムリとあんまり変わりない!(ような気がする)
この方たちはこれを食する!
バケツ一杯にするにはそう時間はかからなかった。
それをどうするのか?と言われるがままにしていると
倉庫へ連れていかれ、穴のあっちこっちに空いた段ボールを指さして
「これに入れるんだよ」と。
箱を開けるとすでにカタツムリがたくさん!
かたつむりさんら、この箱の中で一週間以上断食させて、
糞をださせてから料理するんだそうで、
げ~~~~
という顔をした私にエンツォは
「フランスでは高級食材なんだよ」と笑いながらいう。
そりゃ、有名ですがね。
プーリアでもウサギを食べた初めての日本人、と言われましたが
ここではかたつむりか!
(野生の)カタツムリを食べる初めての日本人になるのか
と観念しましたわたくし。
アンジェラはミニトマトとイタリアンパセリ、
にんにくと塩少々、白ワイン、
そしてもちろん自家製エキストラバージンオリーブオイルを
カタツムリにた~ぷりかけて蒸し煮。
一個恐る恐る、口に入れ食べてみた。
美味しゅうございましたわよ。
貝の磯臭くない版、
といったらわかりやすいでしょうかね?
悪くない!
また、ワイン蒸ししただけのものに
にんにく、エキストラバージンオリーブオイル、イタリアンパセリを
が~ってトロトロにしたものをソースにして
いただいたり。
こりこりした歯ごたえはサザエのようです。
とても美味しゅうございましたよ!
また別なある日、
ビックリ仰天!
エンツォは
頭だけがない羊を一頭持ち帰ってきた(目が・・・点)
一頭を手際よく肉用の独特なナイフを使い丁寧にパーツに分けていく。
手際がとてもいい。慣れている。
さらに部位ごとに小分けに処理。
臓物も全部パーツに分けて、
それぞれをビニール袋に入れて冷凍庫に。
あれ、食べるんじゃないのか?
とほっとしたような少しがっかりだったような。
しかし、バケツの中に真っ黒いものが残ってる。
なにこれ!?
エンツォは
「これをレイコに食べてもらいたいんだよ~」と言う。
「なんですかこれ(この気持ち悪いもんはと心の中で)?」
山で放牧で育ったという羊の真っ黒い臓物。
熱湯をぶっかけ、エンツォ、たわしでごしごしやりだした。
すると
真っ黒がこそげ落ちて、白いのがでてきた!
し、白い!なんで?
「これは一体何?」
「胃袋だよ」と。
アンジェラの手に渡り、
ざくざくに切り刻み圧力鍋に入れ、
生トマトとにんにく、イタリアンパセリ、エキストラバージンと共に圧力鍋で煮込むこと数十分。
何とも言えない、獣肉のくさ~い嫌なにおいが部屋中に充満。。。
ごほごほっ、(ワタクシ咳が・・・)
いや~
これは私、いいや(食べなくても)
と思いましたが、
食べないわけいかないじゃないですか!
いただきましたよ!!!
皿に盛りつけたそれも臭い!
こちらもえいっ!と意を決し口に放り込み噛み噛みしてみると、
ん?え?あれ?
止めていた鼻の息を復活させて良く味わってみると
う、うまい!う、うますぎる!
とろとろとろ~となった羊の胃袋、
いわゆるトリッパってやつです
おいしい!
エンツォが作った自家製赤ワインと共にいただくと
また合う!
パクパク、私むさぼり食らいました。
鍋一体あったのを全員でぺろりと平らげ、
エンツォは満足げ。
片田舎のイタリアの果ての果て、
だからこそのおいしさは、想像以上だった。
次号に続く